新規ヒト環状1本鎖DNAウイルス(TTV)の増殖機構および転写様式の解明

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13470067
• 研究機関: 自治医科大学
• 研究代表者: 岡本 宏明 自治医科大学, 医学部, 助教授 (30177092)
• 研究分担者: 高橋 雅春 自治医科大学, 医学部, 助手 (70326841)
• キーワード: TTウイルス(TTV) / 1本鎖環状DNAウイルス / 複製中間体 / mRNA / 肺 / 肝臓 / 骨髄 / RFLP

研究概要

TTウイルス(TTV)は、1997年に研究代表者らがわが国の原因不明の輸血後肝炎患者から世界ではじめて分離した環状1本鎖DNAウイルスであり、その増殖機構はほとんど未解明のままである。そこで、今年度は感染個体内での増殖部位の特定を試み、複製中間体およびTTV mRNAの存在状況について検討した。
1)各種剖検組織を用いたTTV DNA量、複製中間体およびTTV mRNAの検出結果
アルコール性肝硬変に伴う肝不全により死亡した3名の男性患者から、家族の同意に基づいて得られたそれぞれ9種類の剖検組織(肺、骨髄、肝臓、脾臓、甲状腺、膵臓、腎臓、筋肉、リンパ節)および血清について、TTV DNA量、複製中間体の有無、およびTTV mRNAの有無を調べることにより以下のことが判明した。すなわち、TTVは肺、骨髄、肝臓および膵臓でのウイルス量が相対的に多いが、全ての臓器で検出され、しかも複製中間体としての2本鎖TTV DNAやTTV特異的mRNAの存在も確認されたことから、その程度の差はあっても、検索しえた全ての臓器でTTVは増殖していることが分かった。
2)各種組織内でのTTV遺伝子型分布
血清および各種臓器からTTV DNAクローンをそれぞれ30個ずつ分離し、その塩基配列およびRFLP(restriction fragment length polymorphism)パターンを解析した結果、各種組織内で増殖しているTTVの遺伝子型は1種類から5種類と様々であり、またそれぞれの遺伝子型の頻度も臓器ごとに大きく異なっていることが分かった。
したがって、以上のことから、遺伝子型の異なる多種類のTTVが同一個体内に重複感染しており、臓器や組織によってその分布や頻度が異なり、顕著な多様性を認められること、そしてTTVは肝臓のみならず、多種類の臓器内、組織内で増殖していることが判明した。そして、その分布様式は感染個体によって異なり、TTV増殖の主たる臓器および主たる遺伝子型は個体によって多様であることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Okamoto H.: "Heterogeneous distribution of TT virus of distinct genotypes in multiple tissue s from infected humans"Virology. 288. 358-368 (2001)
• [文献書誌] Okamoto H.: "Genomic and evolutionary characterization of TT virus(TTV)in tupaias and comparison with species-specific TTVs in humans and non-human primates"Journal of General Virology. 82. 2041-2050 (2001)
• [文献書誌] Okamoto H.: "TT virus : virological and genomic characteristics and disease associations"Journal of Gastroenterology. 36. 519-529 (2001)
• [文献書誌] Shibayama T.: "Inverse relationship between the titre of TT virus DNA and the CD4 cell count in patients infected with HIV"AIDS. 15. 563-570 (2001)
• [文献書誌] Asabe S.: "Phosphorylation of serine-rich protein encoded by open reading frame 3 of the TT virus genome"Biochemical and Biophysical Research Communications. 286. 298-304 (2001)
• [文献書誌] Muljono D.H.: "Molecular epidemiology of TT virus(TTV)and characterization of two novel genotypes in Indonesia"Archives of Virology. 146. 1249-1266 (2001)