研究概要 |
TTウイルス(TTV)は、1997年に研究代表者らがわが国の原因不明の輸血後肝炎患者から世界ではじめて分離した環状1本鎖DNAウイルスであり、その増殖機構はほとんど未解明のままである。前年度の研究により、TTVは肝臓のみならず、感染個体の肺、骨髄、脾臓、甲状腺、膵臓、腎臓、筋肉、リンパ節などの種々の臓器や組織で増殖していることを実証できた。今年度はさらに末梢血中でもTTVが広く種々の血液細胞内に分布し、その濃度が血液細胞のsubpopulationによって異なっていること、さらに興味深いことに好中球ではBリンパ球やTリンパ球よりも100倍から1000倍TTV DNA titerが高いことを明らかにすることができた。TTVの増殖機構を明らかにする目的で、種々の細胞株を用い、細胞培養系の確立を試みたが、残念ながら現時点で成功していない。そこで、もう一つのアプローチとして、研究代表者らがB型肝炎ウイルスの培養系での研究を進めてきたように(Okamoto et al.,J Virol 61:3030-3034,1987;J Gen Virol 71:959-963,1990;J Gen Virol 74:407-414,1993)、完全長TTV DNA(3,853塩基長)のtandem dimerを挿入した組換えplasmid DNAを作製し、HepG2細胞、Huh7細胞にtransfectした。コントロールとしてmonomerの完全長TTV DNAを挿入したplasmid DNAを用いた。その結果、TTV DNAのtandem dimerをtransfectした場合のみ、細胞株がHepG2とHuh7のどちらであってもTTVに特異的な3.0kb、1.2kbおよび1.0kbからなる3種類のmRNAの産生を確認することができた。複製中間体としての2本鎖DNAおよびウイルス粒子の産生の有無については現在、解析中である。
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