研究概要 |
TTウイルス(TTV)は、1997年に研究代表者らが発見したヒト環状1本鎖DNAウイルスであるが、その増殖機構は不明であった。そこで、感染個体内での増殖部位の特定を試み、複製中間体としての2本鎖TTV DNAおよびTTV mRNAの存在状況について検討した。その結果、肝臓のみならず、その程度の差はあっても、肺、骨髄、脾臓、甲状腺、膵臓などの体内の多くの臓器でTTVは増殖していることが分かった。また、末梢血中でもTTVが好中球を含む広く種々の血液細胞内に分布していることが明らかになった。種々の細胞株を用い、細胞培養系の確立を試みたが、残念ながら現時点で成功していない。そこで、完全長TTV DNA(3,853塩基長)のtandem dimerを挿入した組換えplasmid DNAを作製し、HepG2細胞、Huh7細胞にtransfectした。その結果、TTV DNAのtandem dimerをtransfectした場合のみ、細胞株がHepG2とHuh7のどちらであつてもTTVに特異的な3.0kb、1.2kbおよび1.0kbからなる3種類のmRNAの産生を確認することができた。そこで、それら3種類のmRNAの塩基配列を決定し、5'末端および3'末端の部位を特定するとともに、splicingの位置を確定した。また、TATA-boxやその上流の約120塩基長からなるGC-rich stem and loop配列、およびその上流の領域での転写調節機能を解析した結果、enhancer活性およびpromoter活性の存在を明らかにすることができた。しかし、培養上清中へのウイルス粒子の産生を認めることはできず、更なる検討を続行している。
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