研究概要 |
プレT細胞レセプターは、pre-TCRα鎖(pTα)とTCRβ鎖からなり、胸腺でのT細胞分化の過程において重要な役割を果たしている。本研究では、昨年度にpTα鎖の転写調節を解析し、プロモーター領域を詳細に調べた。今年度は、pre-TCR複合体を介するシグナル伝達機構を解明するために、昨年度単離した新たなcDNA, RITの遣伝子欠損マウスを作製することができ、このマウスの解析を行った。また、pTα鎖が、常にラフトに存在していて、constitutiveな活性化シグナルが入るとする報告を解析するために、LAT-CD3εキメラ分子を作製して、細胞とマウスに発現させて、その機能を解析した。 (1)RITはpTα発現細胞からサブトラクションによって単離した分子で、CD25^+DN/DP胸腺細胞に限局して発現することが解り、定法に従ってノックアウトマウスを作製した。その結果、この限局した発現パターンにも関わらず、胸腺の分化には変化が生じなかった。しかし、HY特異的TCRトランスジェニックマウスとの交配では、胸腺の分化選択に役割を果たすことが示唆された。一方、末梢には発現しないと考えていたものの、活性化に伴って弱く発現することが判明し、Th1/Th2分化にも少なからず調節に関わることが示唆された。 Pre-TCR複合体が常にlipid raftに存在して分化シグナルを導入しているとすると、ラフトに局在させたCD3分子のITAMを介して分化シグナルが入る可能性が考えられる。そこで、ラフト局在分子LATとCD3ε鎖の細胞内領域とのキメラ分子を作製し、細胞に導入するとともに、トランスジェニックマウスを作製した。細胞トランスフェクタントの解析から、LAT-CD3εキメラ分子は、ラフトの局在することが判明した。トランスジェニックマウスをRag欠損マウスと掛け合わせて、その胸腺分化を解析したところ、予想のように、DN細胞しか存在しないRag-KOマウスの胸腺にDP細胞が出現することが判明した。
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