研究課題
15年度は、鉄、コバルトおよびニッケルの超微細粒子が人の単球等の血球に作用して血管等に炎症性の作用を及ぼす可能性を検証するため、in-vitroの実験を行った。ヒト全血から単球を多く含む層と好中球を多く含む層とを分離し、それぞれの血球に金属の超微細粒子を濃度0〜80μg/mlで添加し、14時間後に培養上澄を採取して、ELISA法により血球から放出されたサイトカイン(IL-1β、IL-8、IL-10)を測定した。その結果、ニッケルの超微細金属は、単核層においてIL-1β、IL-8およびIL-10のいずれも著しく放出させる。好中球層においてもこれらのサイトカインを放出させる傾向が認められた。コバルトの超微細粒子は、単核球層においてIL-8を放出させるが、その他は放出が認められなかった。鉄の超微細粒子は、単核球層においてIL-10を放出させることが確認された。以上の結果は、環境大気中に浮遊するニッケル等の超微細粒子が呼気から肺胞を通過して血液中に侵入した場合、炎症に関連したサイトカインの産生が誘導されることを強く示唆するものである。また、肺腹腔内においても、この白血球は存在していて、特に、先行した炎症(タバコによる気管支炎はその好例)があって、リンパ球、好中球が存在している場合、十分に起こりえる。今後、肺胞腔内のin-vitroでの実験や、各白血球細胞の株を用いてのin-vitro実験を行う予定である。
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