研究概要 |
本研究の目的は、宮城県民47,605名を対象に1990年より実施している大規模コホート研究の長期追跡調査にもとづき、英国の心理学者アイゼンクが開発した性格尺度(外向性/内向性、神経症的傾向、逸脱傾向、律儀さ)と、がんを始めとする疾病との関連を明らかにすることである。 コホート集団の死亡、転出、およびがん罹患に関する追跡調査を行った。死亡と転出に関する追跡調査は、2001年3月まで行った。ベースラインから11年間での死亡者は2,536名(対象者の5.3%)、転出者は2,166名(4.5%)であった。死因の内訳は、がんが1,132名(死因の44.6%)、心疾患が368名(14.5%)、脳血管疾患が302名(11.9%)、その他が734名(28.9%)であった。がん罹患に関する追跡調査は、宮城県地域がん登録との記録照合により、1997年12月31日まで行った。7年間での総罹患数は1,633例(対象者の3.4%)であった。 その結果、がん罹患・虚血性心疾患死亡・脳血管疾患死亡のいずれについても、4つの性格尺度のいずれとも、有意の関連を認めなかった。例えば、全がん罹患についての解析では、性格尺度得点の最小4分位群に対する最大4分位群の多変量補正相対危険度(95%信頼区間)は、外向性が0.9(0.7-1.1)、神経症的傾向が1.2(1.0-1.4)、逸脱傾向が1.1(0.9-1.3)、律儀さが0.9(0.7-1.0)であった。結論として、日本人のがん・虚血性心疾患・脳血管疾患に対する性格の関連は明確ではないことが示唆された。
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