研究概要 |
本研究は、ディーゼル排気ガス(DE)あるいはディーゼル排気微粒子(DEP)が精子産生数ならびに精子の形態変化や精巣の形態変化、奇形や流産・胎児吸収などの次世代に及ぼす影響を調べることと、それらの影響がどのようなメカニズムによって生じているのかを明らかにすることを目的としている。 1)我々は、先にディーゼル排気ガス(DEPとして0.3mg/m^3,1.0mg/m^3,3mg/m^3)を1日12時間ずつ6ヶ月間吸わせた雄マウスと無処置の雌マウスを交配すると1.0mg/m^3群でのみ膣閉塞の奇形を持った子供が生れ、ディーゼル排気ガスには環境ホルモン作用を有する物質が存在することを示唆する結果を得た。 2)本年度は、DEPを皮下投与することによって奇形が発生するかどうかを調べた。4濃度(2.0mg,0.67mg,0.22mg,0.074mg,0.00mg(対象群))のDEPをICR系雄マウスに毎週2回づつ合計10回、皮下投与した。その結果、0.22mg投与群と0.074mg投与群でそれぞれ76匹中3匹(4%)と56匹中1匹(18%)に膣閉塞の子供が生れ、DEPの中には環境ホルモン作用があることを示す結果を得た。 3)このような環境ホルモン作用が発現するメカニズムとしてDEP中に比較的多量に含まれているBaPのような多環芳香族炭化水素(Ah)が細胞質に存在するAh受容体と結合して、核膜を通過して遺伝子に悪影響を及ぼすことが示唆されている。そこで、Ah受容体活性が高いC57/BL系マウスと活性の低いDBA/2J系マウスに、2)と同様にDEPを皮下投与して、無処置雌マウスと交配し、奇形の発現率と流産や胎児吸収、などが起こる割合に相違があるかどうかや精子産生能力に違いが有るかどうかを調べている。これと同時に、DEPが精巣のどんな遺伝子を発現するかを明らかにするため、試薬の購入等の準備に入った
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