研究概要 |
川崎病既往者全体の予後を明らかにする目的で,医療機関を受診していない既往者も含めたすべての患者の追跡を多施設共同研究で行った.本研究を遂行するために,川崎病研究班の班員を中心とした52病院の小児科医からなる追跡研究グループを編成した.この52病院を受診した川崎病患者で,13回の調査のうち第8回から第12回までの川崎病全国調査で報告された患者を本研究のベースとした.すべての対象者は初診時から2001年末日,またはこの日以前の死亡例は死亡日まで追跡された.2002年1月1日以降の生死の状況は,住民基本台帳(住民票)または戸籍により確認した.1982年7月から1992年12月の10年6月の間に,参加52病院を訪れた川崎病患者は8,417人であった.このうちから,容疑例652人,再発例384人,発病後第15病日以降の初診例786人,外国人19人を除き,6,576人(8,417人の内の78.1%)を本研究の対象者とした.観察終了日までに29人(0.4%)の死亡が確認された.観察人値の合計は96,211人年(男:54,879人年,女:41,333人年)であり,平均観察期間は14.6年(96,211÷6,576)であった.人口動態統計の暦年,性,年齢を一致させた死亡率を用いてこの集団の期待死亡数を計算し,実際の死亡数との比である標準化死亡比を用いてこの集団の死亡率の評価を行った.その結果,心後遺症がない群の急性期以降の死亡率の上昇は見られないこと,(2)心後遺症を残した男では標準化死亡比が1.95と統計学的に有意ではないものの上昇していること,の2点を明らかにした.
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