研究課題/領域番号 |
13470115
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
消化器内科学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小池 和彦 東京大学, 医学部附属病院, 助教授 (80240703)
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研究分担者 |
藤江 肇 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (90332577)
新谷 良澄 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (80261965)
森屋 恭爾 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (00272550)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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キーワード | 肝癌 / トランスジェニックマウス / コア蛋白 / 炎症 / 脂肪化 / 細胞障害性リンパ球 / アルコール |
研究概要 |
C型肝炎における肝発癌のメカニズムはまだ明らかではないが、最近私たちは、C型肝炎ウイルス(HCV)のコア蛋白がトランスジェニックマウス(Tg)において肝癌を誘発することを示した。すなわち、HCVが直接的に肝発癌に関わっている証拠を初めて明確に示したわけである。しかしながら、ウイルス蛋白のもつこれらの作用は、むろん肝発癌に対して必要十分であるとは言えない。今回私たちは、HCVのコードする蛋白とそれに対する免疫応答である炎症とが、C型肝炎関連肝発癌において各々果たす役割とその作用経路、そしてそれらの相互作用をTgの系を用いて明らかにしようと検討している。 コア遺伝子Tgを用いて、ふたつの肝炎モデルを作製した。さらに、アルコール投与モデル、四塩化炭素投与モデルも作製し、HCV蛋白との相互作用を検討した。 CAGプロモーターを制御領域として用いたコア遺伝子発現DNAワクチンでは、コア蛋白に対する細胞障害性Tリンパ球(CTL)は充分に誘導されず、その後の解析は不可能であった。正常C57BL/6マウスで誘導されたコア蛋白に対するCTLクローンをコア遺伝子Tgに移入した肝炎モデルでは、CTLクローンを移入し肝炎の惹起に成功している。さらに解析を行なっている。 HCVコア蛋白はTg肝において、組織学的な炎症が不在のもとにROS(reactive oxygen species)を発生させ肝細胞DNA変異を惹起した。この作用はHCVによる肝発癌経路のひとつと推定される。肝脂肪化はこれを増悪させた。アルコール投与はROSの産生を相乗的に増悪した。 HCVコア蛋白は、Tg肝においてTNF-α、IL1-βを増加させ、その下流のシグナル伝達経路であるMAPキナーゼのうち、JNKから転写因子AP-1に至る経路を活性化した。残り二つの経路であるP38とErk1/2においては、活性化は認められなかった。しかし、アルコール投与によって、P38とErk1/2が活性化され、逆にJNKでは対照と差がなくなるという現象が認められた。このようにHCVコア蛋白は、核内受容体の活性化を介して、脂質代謝、細胞分化・増殖に関わる細胞遺伝子の転写制御の変異を惹起し、DNA障害作用、JNKシグナルと転写因子AP-1の活性化を引き起こし、炎症、アルコールと相乗作用を起して肝発癌へと至ると想定される。
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