研究概要 |
肝幹細胞は肝細胞,胆管細胞,膵臓細胞,小腸細胞に分化する細胞群と考えられてきた。最近になり,骨髄中にも同様な幹細胞が存在することが証明された。我々は骨髄中に存在するこの多能性分化能を持つ幹細胞を使った再生療法を開発したいと考え基礎的検討を行ってきた。骨髄細胞を用いた肝臓再生療法の開発のため、骨髄細胞から肝細胞へのin vivo分化評価モデル(GFP/CC14モデル)を開発した(特願2001-271240号、特公2003-70377,J.Biochem.134;551-558,2003)。このモデルにおいては持続肝障害下で骨髄細胞は肝芽細胞に分化転換し最後は肝細胞へと分化する。また新たに作成した胎児肝モノクローナル抗体Liv8抗体とGFP/CC14モデルを使った解析により、骨髄中のLiv8陰性分画に肝臓再生に有用な細胞分画が存在することがほぼ明らかになった(BBRC23;313(4):1110-8,2004)。現在このLiv8抗体の認識する抗原の同定を目指した研究を行っている。この抗原が決定できれば、人骨髄細胞よりの効率的な肝幹細胞分離法の開発につながると考えられる。さらに、このモデルの解析の結果、持続炎症におけるシグナルは、骨髄細胞の肝細胞への分化に必須など、持続炎症下の微小環境"Niche"の問題が重要と考えられた。実際に人肝細胞癌は、肝炎、肝硬変症と続く持続肝障害下で発生してくる。この持続肝障害下で発生してくる癌幹細胞にも我々は注目して研究を行った。この解析のために、従来行ってきた細胞外マトリックス、クッパー細胞などの解析を行った。また我々が同定した新規dominant inhibitor HLH型転写制御分子HHMの研究において、HHMの発現は肝幹細胞(oval cell)の発生する一つのモデルのコリン欠乏アミノ酸置換食投与ラットを用いた解析の結果、肝過形成結節のFociにHHM mRNAの発現が上昇していることが明らかになった。HHMを認識する抗体により人肝細胞癌において前がん性病変であるAdenomatous HyperplasiaにHHMの発現量の増加を確認した。以上の結果より肝幹細胞の分化制御と癌幹細胞の発生には共通のメカニズムが存在する可能性が明らかになった。
|