研究概要 |
腸上皮化生の分子機構を解明するため、胃壁細胞にホメオボックス遺伝子CDX1,CDX2を特異的に発現させたトランスジェニックマウスを作成し、それぞれの遺伝子によって発現する表現型を比較検討した。CDX2発現マウスにおける腸上皮化生では、偽幽門腺様の細胞を底部に持ちパネート細胞を欠く不完全型腸上皮化生に近いモデルができたが、CDX1を発現するマウスでは、パネート細胞を含むすべての腸上皮構成細胞系列が認められた。ただ、正常の腸上皮と異なり、パネート細胞は蔭窩に局在するのではなく上方の通常であれば吸収上皮細胞が位置する部位に認められること、また腺管が全体として強い増殖活性を示し、結果として粘膜の肥厚が認められるなどの相違があることが明らかになった。これらの結果は次項に示すように、英文論文として発表しているほか、2003年の米国ならびに日本の消化器病学会総会で発表予定である。またこれらのマウスにおける遺伝子発現の変化については、DNAチップを用いて解析を開始しており、実際の細胞形態の変化に先立って多数の腸上皮関連遺伝子発現が始まっていることを見いだしている。今後、さらに解析を進め腸上皮化生発現の分子機構を明らかにするための研究を継続する予定である。一方同様の変化がヒトにおいて見られるかどうかを検討し、腸上皮化生が多く認められる胃粘膜、バレット上皮においてもCDX1,CDX2がその発生に関与していることを示唆する結果を示した。これらは英文論文として発表済みである。またHellcobaαerpylorf感染スナネズミモデルにおいても同様にCDX1,2が腸上皮化生の発生に関与していることを示し、学会発表した。
|