研究概要 |
研究1:喫煙マウスにおける終末細気管支上皮細胞における分子生物学的解析 今年度は、マウスに喫煙暴露後の細気管支上皮細胞における遺伝子発現を系統的、経時的に明らかにすることを目的とした。マウスに連日喫煙させ、1、4、28日、肺気腫を発症している6ヵ月後に屠殺し、凍結標本からLaser capture microdissection法を用いて細気管支上皮のみを選択しRNAを抽出する方法を確立し報告した(T.Betsuyaku,AJRCMB,2001)。そのRNAを増幅し、Affimetrix社製Genechipを用いて増幅前後での均等性を検証した。さらに6,000種類の既知、6,000種類の未知遺伝子の増減プロファイルを慢性時間経過を追って検討し、さらに全肺RNAを用いた解析との比較を行った。 研究2:肺組織のアデノウイルス潜伏感染と肺気腫の発症 肺癌のため肺葉切除術を施行された喫煙指数450以上の重喫煙者である男性12名を対象とした。切除された肺葉のうち非癌部分について、ランダムに6ブロック作成したパラフィン包埋標本からDNAを抽出し、nested PCRを施行した。喫煙者では7名中7名(42ブロック中20ブロック)、肺気腫患者では5名中5名(30ブロック中12ブロック)にアデノウイルスE1A DNAを検出し、一肺葉内でも不均等に存在していることが示唆された。 研究3:肺内好中球活性化と肺胞マクロファージ機能における加齢と慢性喫煙の影響 中高年喫煙者の中で、早期肺気腫患者では健常喫煙者と比べて気管支肺胞洗浄(BAL)液中に好中球活性化の所見が認められると報告してきた。今回はこの特徴が若年喫煙者でも個体差として存在する可能性を検討した。健常若年者42名(喫煙者25名)を対象にBALを施行し、同液中の好中球エラスターゼ量、interleukin-8量、マクロファージからのIL-8放出能を測定した。若年者では非喫煙、喫煙者間で差はなく、個体差も小さかった。一方、肺胞マクロファージのIL-8放出能は若年者では中高年者より有意に高いが、中高年者と同様に喫煙者では、非喫煙者よりもむしろ低下していることを明らかにした。
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