研究概要 |
1.臨床病理学的病型と疾患概念の確立 臨床神経学的検討:グアム島のALS/PDC患者に認められる特異な網膜症(pigmentary retinopathy)を、紀伊半島のALS/PDC患者で確認した。ALS 4例とパーキンソン痴呆複合(parkinsonism-dementia complex : PDC)10例について、CT, MRI,脳血流シンチを施行した結果、前頭葉と側頭葉の血流低下がALSとPDCに共通する神経放射線学的特徴であった。 神経病理学的検討:平成15年度は、新たに1例のPDCの剖検例を得た。これまでに得られた紀伊半島の筋萎縮性側索硬化症(ALS)4例とPDC 8例について神経病理学的に検討し、以下の結果を得た。(1)前頭葉と側頭葉の萎縮と神経細胞脱落(2)大脳皮質、脳幹諸核、脊髄灰白質に多発する神経原線維変化(NFTs)(3)大脳皮質運動野と脊髄の運動神経細胞脱落と錐体路変性。これらの所見は、グアム島のALS/PDCと同様であった。 2.遺伝様式の確定と遺伝子解析 発症者と家族の同意を得て作成した家系図と提供されたDNAを用いた連鎖解析を実施中であるが、これまでに有意な遺伝子座は同定されていない。 3.免疫組織化学、高性能の反射コントラスト顕微鏡(Reflexion Contrast Microscope : RCM)による脳内各種封入体の細胞生物学的検討 ALS/PDC, Alzheimer's disease (AD),正常対照各5例の海馬標本を各種のリン酸化部位別抗タウ抗体で免疫組織学的に検討した。ALS/PDC脳に出現するタウ蛋白は、N末から412番目のセリンのリン酸化を認識する抗体では染色されなかった。抗タウ抗体で免疫染色した超薄切切片を、RCMを用いて解析し、タウ蛋白の細胞内局在について検討した。
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