研究概要 |
若年性パーキンソン病(AR-P)の原因遺伝子パーキンはユビキチンリガーゼであることが我々の研究グループにより報告されている.Loss-of-function型変異効果が予想されるAR-JPではパーキン蛋白が分解する基質が分解されずに蓄積することで細胞死が誘導されることが予想される.従って,その基質同定が最重要課題である.そこでヒト脳cDNA libraryを用いてYeast two hybrid screeningを行い14種のクローンを単離できた.そのうち既に基質候補として報告されているCDCrel-1を我々も単離できており,1)CDCrel-1がシナプス小胞に関する分子でありexocytosisに関与すること,2)パーキン蛋白の局在もシナプスにあること,3)神経細胞でシナプスが特によく発達していることを含めてパーキン蛋白のexocytosisの関与について検討した.方法としてはヒトGrowth hormone (GH)をtracerにパーキンcDNAとdouble transfectionを行い脱分極化及び非脱分極化で高感度ELISAにてヒトGHを測定した.CDCrel-1についてはoverexpression状態であってもexocytosisの抑制は観察されなかったが,パーキン蛋白のRING fingerドメインに変異を持つ変異パーキン蛋白ではドミナントネガティブ効果的にexocytosisを抑制した.これら結果からはパーキン蛋白はシナプスにあってexocytosisに関与していることが予想された.更に我々は理化学研究所脳科学センターの高橋良輔先生との共同研究でERストレスに関与するパエル受容体もその基質の一つであることを報告している.実際にパーキン遺伝子変異を確認できているAR-JP剖検脳を用いて免疫組織化学的検討を行った.用いた4例について検討したところexon 2に変異のある1症例にパエル受容体の蓄積を認めた.他の症例においてはその蓄積を認めなかった.少なくともパエル受容体の蓄積を1例に認めたことは基質候補して可能性の高い事を示す.この1例のみにパエル受容体の蓄積を認めたことの解釈としては,この症例が最も変異効果が強く殆どの分子が存在しないことにある.更に症例の蓄積を行いパエル受容体について検討する予定である.変異については700例の症例について行い劣性遺伝性であれば約50%の頻度で変異が存在していることがわかった.また優性遺伝性を示す家系でも変異が存在していた.この解釈としてはcarrierであっても年齢などの効果により発症しうることを示している.つまりパーキン遺伝子のcarrierもパーキンソン病発症の危険因子となることが予想された.現在変異-臨床型について詳細な検討を加えている.
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