研究概要 |
【目的】臨床上rtPAを用いた超急性期の脳塞栓溶解療法に関して多くの関心が寄せられているが、再灌流による神経細胞障害については充分な注意が払われていない。我々はONOO-生成の指標である3-nitro-L-tyrosine (NO2-Tyr)を定量的に測定し梗塞脳でのONOO-の生成病態を報告してきたが、本研究では永久および一過性局所脳血管閉塞モデルを用い、脳梗塞容積、NO2-Tyr生成率について2群間で比較検討し、永久局所脳虚血と一過性局所脳虚血の病態の違いを解明することとした。 【方法】雄SD ratを用い、両総頚・左中大脳動脈を24時間閉塞する永久閉塞群(n=14)と、両総頚動脈永久閉塞+左中大脳動脈を2時間閉塞した後左中大脳動脈を22時間再灌流する一過性閉塞群(n=12)の2群を作製した。NO2-Tyrは脳を梗塞部(I)、梗塞周辺部(P)、基底核梗塞部(B)に分割後、酸加水分解しHPLCにて測定した。また、HE染色したスライドを用いてdigitizerで梗塞巣容積を測定した。 【結果】1)NO2-Tyr生成率は、永久閉塞群ではI:0.04±0.02%, P:0.09±0.02%, B:0.01±0.01%、虚血再灌流群ではI:0.71±0.12%, P:1.09±0.22%, B:0.17±0.07%であり、永久閉塞群と比較して虚血再灌流群ではNO2-Tyr生成率が有意に増加していた。2)梗塞巣の容積は梗塞巣全体では有意差はないものの、虚血再灌流群の大脳皮質梗塞巣は永久閉塞群と比較して有意に増大していた(138±12mm^3 vs. 102±11mm^3 ; P<0.05)。また、脳浮腫も虚血再灌流群において有意に増悪していた。 【考察】今回の結果は再灌流において多量のsuperoxideとiNOS活性化に伴うNOの産生が引き起こされ、ONOO-生成が増強されたことを反映している。したがって臨床での血栓溶解療法は再開通の時期が遅れると梗塞巣が増悪することがあり充分な注意が必要と考えられた。
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