自己貪食異常を示す筋疾患の病態解明と治療法開発に関する研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13470138
• 研究機関: 国立精神・神経センター
• 研究代表者: 西野 一三 国立精神・神経センター, 神経研究所・疫病研究第一部, 部長 (00332388)
• 研究分担者: 村上 信行 獨協医科大学越谷病院, 講師 (00316598)
• キーワード: ライソゾーム / ミオパチー / 自己貪食空砲 / Danon病 / 縁取り空砲 / 遠位型ミオパチー

研究概要

代表的な自己貪食空胞性ミオパチーであるDanon病はまれであることに加え、遺伝学的に異なる乳児例が同じ病名で報告されるなど、疾患概念の混乱が見られる。そこで、Danon病の臨床像を確定するために、遺伝学的にDanon病と診断が確定した13家系38名の患者の臨床病理学的特徴について検討した。男性患者では、全例で心筋症とミオパチーが認められたが、精神遅滞は70%の頻度であった。女性患者では、心筋症は全例に認められたが、ミオパチーは33%、精神遅滞は6%であった。また、血清CK値は男性患者では全例で上昇が見られたが、女性患者では63%に上昇が見られるのみであった。死亡年齢は男性が19±6歳、女性が40±7歳で何れも死因は心不全であった。女性患者では臨床症状は比較的軽度ではあるものの、致死的心筋症が必発であることが明らかとなった。
一方、これまでにDanon病と同じ「酸性マルターゼが正常なライソゾーム性糖原病」の病名で、2例の乳児例が報告されている。これら乳児例につき検討したところ、何れの例でもLAMP-2は欠損しておらず、Danon病とは別の疾患であることが明らかになった。従って、これらの例は、乳児型自己貪食空胞性ミオパチーと呼ばれるべきである。
また、自己貪食異常を伴い遠位筋が主に侵される縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRV)の原因遺伝子は長らく不明であった。遺伝性封入体ミオパチー(HIBM)の原因遺伝子、UDP-N-acetylglucosamine 2-epimeraseとN-acetylmannosamine kinaseの2つのシアル酸代謝酵素をコードする遺伝子(GNE)を調べたところ、互いの血縁関係のない18例のDMRV例において、ホモ接合型または複合ヘテロ接合型の変異を認めた。従って、DMRVは、HIBMとallelicであることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Sugie K, Yamamoto A, Nishino I, et al.: "Clinicopathological features of genetically confirmed Danon disease"Neurology. (in press).
• [文献書誌] 西野一三: "精神遅滞を伴う筋変性疾患ダノン病の解明"Vita. 19. 42-45 (2002)
• [文献書誌] Yamamoto A, Morisawa Y, Verloes A, Hirano M, Nonaka I, Nishino I: "Infantile autophagic vacuolar myopathy is distinct from Danon disease"Neurology. 57. 903-905 (2001)
• [文献書誌] Nishino I, Yamamoto A, Sugie K, Hirano M, Nonaka I: "Danon disease and related disorders"Acta Myologica. 20. 120-124 (2001)
• [文献書誌] 西野一三: "過剰自己貪食を伴うX連鎖性ミオパチー"日本臨牀. 36. 230-232 (2001)
• [文献書誌] 西野一三: "Danon病"日本臨牀. 36. 225-229 (2001)
• [文献書誌] Nishino I: "Lysosomal membrane disorders-LAMP-2 deficiency. The molecular and genetic basis of neurological and psychiatric disease. 3rd ed. Rosenberg RN, ed."Butterworth-Heinemann. Boston, MA, USA(in press).