遺伝学的にDanon病と診断が確定した13家系38名の患者の臨床病理学的特徴について検討した。男性患者では、全例で心筋症とミオパチーが認められたが、精神遅滞は70%の頻度であった。血清CK値は男性患者では全例で上昇が見られたが、女性患者では63%に上昇が見られるのみであった。死亡年齢は男性が19±6歳、女性が40±7歳で何れも死因は心不全であった。女性患者では臨床症状は比較的軽度ではあるものの、致死的心筋症が必発であった。Danon病と類似するもの遺伝学的に異なる、成人発症の多臓器障害型の自己貪食空胞性ミオパチー(AVM)と、先天性ミオパチーに類似した臨床症状を呈しX連鎖性AVMを新たに見出した。後者の先天型に関しては、Xq28に遺伝子座がある可能性が高いことを明らかにした。また、lysosomeと融合後速やかに分解されるべきautophagosome形成必須分子LC3が、lysosomeとの融合後も分解されていないことが示され、自己貪食物質分解のプロセスに何からの異常があることが明らかとなった。 縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRV)の原因遺伝子が、遺伝性封入体ミオパチー(HIBM)の原因遺伝子と同様に、UDP-GlcNAc 2-epimerase/ManNAc kinase(GNE/MNK)をコードする遺伝子(GNE)であることを明らかにした。患者で認められた変異を有する組換え蛋白質を作製しGNEおよびMNKの活性を測定したところ、GNEドメインの変異ではGNE活性が、MNKドメインの変異ではMNK活性が低下していた。患者培養細胞では、シアリル化が低下していたが、GNE/MNK経路の代謝産物であるManNAcやNeuAc添加によりシアリル化が回復することを初めて示した。このことは、同様の手法により治療法を開発出来る可能性を示している。
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