研究概要 |
特発性心筋症は原因不明の心筋疾患として定義され、難治性心不全や突然死を来たす予後不良の疾患である。また、高血圧性心筋症は高血圧の存在下に特発性心筋症と類似した病態を呈する。このような心筋症の病因や病態形成には遺伝的な要因が関与すると考えられている。そこで本研究では、特発性心筋症年高血圧心筋症の発症と密接に関連する遺伝子変異や、遺伝子多型を特定し、その機能変化の解明を通じて、難治性心不全の発症に関わる分子メカニズムを明らかにすること、さらにそれらの知見を心不全治療法の開発に資することを目的とした本研究によって、(1)タイチン,Tcap, MLP, Cyperなどの筋Z帯構成要素の変異が心筋症の原因となること、(2)拡張型心筋症変異によって筋Z帯要素間の結合性が減弱するが肥大型心筋症変異では逆に結合性が増強すること、(3)心筋への圧負荷ないし容量負荷によるストレッチ反応にはMLP-Tcap-Titin複合体が関与し、このZ帯複合体がセンサー機能を有すること、(4)ストレッチ反応にはZ帯タンパクのリン酸化制御が関わること、(5)Tcapに精合する新規増殖因子様タンパクの変異が高血圧症心筋症仁有意に関連すること、(6)当該増殖因子様タンパク変異はTcapとの結合を低下させることを明らかにした。さらに、(7)これらの変化が筋収縮のカルシウム盛受性制御の異常とも密接に関わること、(8)筋収縮のカルシウム感受性を人為的に増強させたM21トランスジュニックマウスが心肥大と突然死を来たす心筋症動物モデルとなることを示した。これらの知見は筋Z帯タンパク間の結合性を修飾変化させることで、ストレッチ反応のリン酸化制御事よび筋収縮緯のカルシウム感受性制御をターゲットとする治療法の開発が可能であるととを示唆する。
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