研究概要 |
マウスのアポトーシスによる劇症肝炎を生ずる投与量(0.5ug/ml)の1倍、4倍、および10倍のsFas ligandを開胸後、左室心筋内に多発性に筋注した。sFas ligandのかわりに生食を投与した群をコントロールとした。投与後、1時間、6時間、24時間および48時間後にsacrificeした(各N=10)。10倍濃度アポトーシス群を新たに作製(N=10)し、caspaseブロッカーを用いてアポトーシスがブロックされるかを検討した。 その結果、1)in vivo成人ラット心筋細胞はFas ligand10倍濃度群でのみアポトーシスが生じ、アポトーシス心筋細胞は24時間後には心筋組織からclearanceされた。すなわち、in vivo心筋細胞のFas ligandに対するアポトーシス感受性は、肝細胞と比較し10倍低くかつ24時間以内に消失する。2)10倍濃度群では心筋組織にcaspase3が活性化され、かつpancaspaseブロッカーBoc-Asp-fmkにより、心筋細胞のアポトーシスはブロックされた。すなわちFas ligandで誘発されるアポトーシスのsignal transductionはcaspase3を介して生ずる。3)in vivo成人心筋細胞アポトーシスの超微形態は、schrinkage,chromatin condensation,アポトーシス小体があるという点では他の細胞のアポトーシスと同様である。しかし、半月形または三ケ月形のchromatin condensationがないことや、ミトコンドリアの変化の点で他の細胞のアポトーシスと著しく異なっている。 以上より、心筋細胞アポトーシスの特徴が、感受性、clearance rateならびに超微形態という観点から明らかにされた。この成績は、今後の循環器アポトーシス研究にきわめて重要な所見を提供している。
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