研究概要 |
1)in vivo成人ラット心筋細胞はFas ligand10倍濃度群でのみアポトーシスが生じ、アポトーシス心筋細胞は24時間後には心筋組織からclearanceされた。すなわち、in vivo心筋細胞のFas ligandに対するアポトーシス感受性は、肝細胞と比較し10倍低くかつ24時間以内に消失する。 2)10倍濃度群では心筋組織にcaspase3が活性化され、かつpancaspaseブロッカーBoc-Asp fmkにより、心筋細胞のアポトーシスはブロックされた。すなわちFas ligandで誘発されるアポトーシスのsignal transductionはcaspase3を介して生ずる。 3)in vivo成人心筋細胞アポトーシスの超微形態は、schrinkage, chromatin condensation,アポトーシス小体があるという点では他の細胞のアポトーシスと同様である。しかし、半月形または三ヶ月形のchromatin condensationがないことや、ミトコンドリアの変化の点で他の細胞のアポトーシスと著しく異なっている。 4)DNA repairまたは増殖のマーカーであるPCNA染色ではTUNEL陽性心筋細胞は全て陰性であった。すなわち心筋細胞アポトーシスのプロセスにおいてPCNAが陰性であった。 5)アデノウィルスベクターを用いてBcl-2遺伝子をラットの下腿筋肉に注射し、Bcl-2の発現をみた。1週間後のsacrifice時点でのBcl-2発現量はコントロールと比較し血中で30倍、心筋組織においてウェスターン法では20倍であった。そこで、遺伝子治療1週間後に心筋内にアポトーシスが生ずるFas-ligand5μg/mlを心筋内に直接筋注し、アポトーシス心筋細胞の発現がブロックされるかを検討した結果、心筋細胞アポトーシスの量すなわちTUNEL陽性心筋細胞の%は非遺伝子治療時の1/2に減少した。このことはBcl-2遺伝子治療が心筋細胞のアポトーシスの抑制に有効であることを示唆している。しかし、Bcl-2遺伝子治療のみではFas-ligandに誘導されるアポトーシスは完全にはブロックされず、Bcl-2を介さないpathwayもまた存在することを示している。 これらの成績は、今後の循環器アポトーシス研究にきわめて重要な所見を提供している。
|