研究分担者 |
井田 孔明 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (60313128)
林 泰秀 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (30238133)
滝田 順子 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
小林 美由紀 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (60205391)
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研究概要 |
神経芽腫において1番染色体短腕(1p)のp35-36領域には、発生・進展に重要な役割を果たす遺伝子が座位すると推測される。この領域の大部分をカバーするBACコンティグを作成し、これを用いて神経芽腫25細胞中1株(NB-1)に約480kbのホモ欠失領域を同定し、この領域より7個の既知の遺伝子(E4, KIF1B, SCYA5, PGD, Cortistatin, DFF45, PEX14)、3つのEST、2つのマイクロサテライトマーカーを同定した。これらの遺伝子のうちキネシンfamilyであるKIF1B-β遺伝子のcDNAとexon-intron配列を決定し、少なくとも47exonを有することをみいだした。この遺伝子は一部の神経芽腫の新鮮腫瘍で発現の低下がみられた。またpolymerase chain reaction(PCR)-single strand conformation polymorphism(SSCP)による変異解析ではframe shift mutationはみられなかったが、3カ所でmissense mutationが、2カ所で遺伝子多型みられた。またヘテロ接合体欠失(LOH)は16例中6例(38%)にみられた。これらのことより、KIF1B-β遺伝子は神経芽腫の候補癌抑制遺伝子の可能性は低いと考えられた。さらに家系のマッピングより、Charcot-Marie-Tooth disease 2A型(CMT2A)の原因遺伝子が1p36.2にあることが推測されたので、CMT2Aの患者検体を用いてPCR-SSCP法で変異を検討したところ、motorドメインにmissense mutationを検出した。この変異により、この遺伝子のin vitroでのATP活性の低下が認められた。またこの遺伝子のヘテロ欠失マウスは生後CMT2A同様の神経症状がみられ、この遺伝子がCMT2Aの原因遺伝子であることをみいだした。さらにKIF1B-α遺伝子を単離し、神経芽腫で検討している。DFF45はcaspase 3がアポトーシスを誘導するのに必要な蛋白である。NB-1株でホモ欠失がみられたので、神経芽腫でreverse transcriptase(RT)-PCRによる発現の、PCR-SSCP法による変異の検討を行ったが、発現の減弱や変異はみられず、alternative splicingによると思われる多数のisoformがみられた。これらのisformは腫瘍のみにみられるものもあった。これらのことよりDEF45遺伝子は神経芽腫の癌抑制遺伝子の可能性は低いと思われた。
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