研究概要 |
神経芽腫において1番染色体短腕(1p)のp35-36領域をカバーするBACコンティグにより、神経芽腫細胞株(NB-1)にホモ欠失領域を検出し、7個の既知の遺伝子(E4,KIF1B, SCYA5,PGD, Cortistatin, DFF45,PEX14)を同定した。これらの遺伝子のうちキネシンfamilyであるKIF1B-βのゲノム構造を決定した。この遺伝子は一部の神経芽腫の新鮮腫瘍で発現の低下がみられた。またpolymerase chain reaction (PCR)-single strand conformation polymorphism (SSCP)による変異解析とヘテロ接合体欠失(LOH)解析により、KIF1B-βは神経芽腫の候補癌抑制遺伝子の可能性は低いと考えられた。さらにKIF1B-βのmajor isoformであるKIF1B-αを単離し、神経芽腫で検討したが、変異はみられず、神経芽腫の原因遺伝子ではないことを明らかにした。NB-1株でホモ欠失がみられたDFF45は、神経芽腫において、腫瘍特異的な多数のisoformがみられたが、神経芽腫の癌抑制遺伝子の可能性は低いと思われた。今年度は1p36に座位するcaspase 9の検討を行ったが、変更はみられず、神経芽腫の原因遺伝子ではないと思われた。さらにCancer arrayを用いて神経芽腫の進展例と早期例で発現プロファイルの検討を行い、発現パターンに差のみられる遺伝子を約500個検出した。Real-time PCR法を用いて発現に差のみられた遺伝子の定量解析を行ったところ、API2、p19INK4Dは非進展例で高発現が認められ、BAF60cは進展例で高発現が認められた。これらの遺伝子は神経芽腫の新たな予後因子として臨床的に応用できる可能性が示唆された。
|