再生医療が、21世紀の新たな医療として、社会から注目されるようになって久しい。しかし、その再生医療の基盤となる発生学、特に哺乳類における個々の臓器発生のメカニズムについては解明されていない部分が数多く残されている。哺乳類における臓器発生機構が解明されれば、先天性の臓器欠損、形成不全の原因も明らかとなり、さらには、それらの疾患に対する治療も可能となることが期待される。そこで我々は、本研究において、マウス胎生期における臓器発生のなかでも、特に造血発生について解析することを計画した。 その結果、マウス胎生期造血においては、(1)胎生75日の卵黄嚢には一次造血由来の巨核球造血が存在し、その後の血管発生に対応していること、(2)二次造血における造血幹細胞の発生にはaorta-gonad-mesonephros(AGM)領域のストローマ細胞が関与していること、(3)そうした造血の場にあれば、卵黄嚢からも造血幹細胞は発生し得ること、(4)マウスAGM領域由来のストローマ細胞膜には、ヒトの胎生期を起源とする臍帯血造血幹細胞にも作用する分子(群)が発現されていること、(5)マウス胎生期に発生した造血幹細胞にはCD34が発現されており、誕生後8週頃よりその発現が現弱し始めることが明らかとなった。これらの成果は、造血幹細胞を用いた再生医療の一層の発展に寄与するばかりでなく、哺乳類の臓器発生機構の解明にも貢献するものと期待される。
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