本研究の目的は、極めてユニークな方法も含めて分子遺伝学的手法及び構造生物学的手法を駆使し、アトピー素因を規定しているアトピーの多遺伝子群を世界に先駆けて系統的・総合的に解明することを目的とする。さらにこの遺伝子の解明により環境との関わりを検索し、現存する予知、早期診断法及び治療法とは質を異にした分子遺伝学的な画期的、抜本的予知法、早期診断法並びに多様な病因病態に対抗してオーダーメイド治療・予防法を確立し、広く社会に貢献することを目的とした。 本研究の実績がほぼ予定通りに得られ、世界的な知見も見出された。 (1)IgE産生抑制系とその異常の系統的解明と環境との関連 IL-12レセプターβ2鎖遺伝子の異常を世界に先駆け明らかにした。さらにin vitroでIgE産生系を作成し、検討した。結果IFN-γ低下によりIgE産生の抑制が効かないことが示された。これはアレルギーの病因遺伝子の重要な1つがIgE産生抑制系の遺伝子異常であることを示した初めての成果である。さらに、IFN-γ産生を誘導するIL-18に着目し、まず(1)IL-18を大量に精製し、IL-18の立体構造を明らかにした。次いで(2)抑制系であるIL-18シグナリングにつき検討したところ、IL-18レセプターα鎖遺伝子異常によりIgE産生異常を来すことを世界で初めて明らかにした。 (2)解明されたアトピーの病因遺伝子群の構造生物学的解明と機能異常との関連をさらに解明した。 (3)解明された遺伝子とコードされるタンパクの異常をもとにして多様な病因・病態に対応したオーダーメイド治療・予防への応用を検討した。すなわち(1)βラクトグロブリンを改変したミルクの作成(2)IL-18レセプター結合低分子の解明を用いた抑制系の修復である。
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