研究概要 |
リソソーム病はリソソーム内の加水分解酵素の欠失により、未分解の基質がリソソーム内に蓄積することにより細胞障害をおこし、各臓器の障害につながると考えられているが、特に中枢病変における分子メカニズムについては詳細不明である。また中枢神経病変を伴うリソソーム疾患は、酵素補充療法も中枢神経神経病変には効果がないと考えられている。このため、中枢神経病変に対する多面的なアプローチとして下記の方法について実験を行った。 1)中枢神経系で欠損酵素を発現させて蓄積物質を除去する;酵母による発現ベクターを構築しその発現を試みたが、効率が低く十分な量が得られなかった。 2)スフィンゴリピド合成酵素を抑制し、蓄積する脂質を減少させる;サイクロセリンがクラッベ病の細胞毒性物質サイコシンの合成阻害をすると考えられており、用量依存性などを調べる予定である。 3)蓄積物質を分子シャペロンを用いて排泄させる;クラッベ病におけるサポシンAは欠損酵素galactocerebrosidaseの活性化因子と言われているが、基質に結合し分子シャペロンともなりうると考えられるため、まず酵母による大量発現系を構築した。その結果高純度のサポシンAが十分得られ、β-glucosidase, galactocerebrosidaseともに測定系において活性を数倍に増大させることが判明した。In vivoで治療法とならないか検討中である。 4)残存酵素活性を上昇させる;上記におけるサポシンAが残存酵素活性を増大させる可能性があり、in vivoで確認中である。 5)DNA-RNAオリゴを用いたhomologous recombinationによる治療;当該期間での進行はなかった。 6)リソソームへの蓄積から神経細胞死に至るシグナルをブロックする;ファーバー病においてセラミドの蓄積により、NFkB、MCP-1などのサイトカイン、ケモカインの分泌増大が確認され、NFkBのデコイ治療が効果ないか検討中。またクラッベ病におけるサイコシンレセプターは細胞の多角化に関与するとされているため、この抗体により、レセプターの抗体による発現分布の解析、中和抗体としての治療効果につき検討している。
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