研究概要 |
本研究において、我々は固定薬疹の病変部表皮に多数認められる表皮内T細胞が自然免疫担当細胞類似のphenotypeと機能を有している可能性を検討した。これらの表皮内T細胞は、誘発前の休止期にはTCR-αβ,CD3,CD8,CD45RA, CD11bを発現し、CD27,CD56は発現しておらず、いわゆるeffector memory T細胞に相当するphenotypeを有していた。しかし原因薬剤によるin situの刺激にて、これらの細胞にはNKG2DやCD57などのNK様のマーカーの発現が誘導された。さらに、真皮内や末梢血中の同様のCD8^+T細胞に比べ、この表皮内CD8^+T細胞は極めて速やかにIFN-γ mRNA、蛋白を強く発現することが明らかになった。この表皮内T細胞はパーフォリンやグランザイムBのような細胞傷害性顆粒を有しており、これを放出することにより、周囲のケラチノサイトを傷害することが出来る。このように本来は組織構築を守るべく分化したと思われる表皮内T細胞は、コントロールされない活性化を受けた場合には、組織に対し著明な傷害を与える可能性がある。そのため通常の状態では不必要な組織傷害を防ぐために、このような自己傷害の危険を有する表皮内T細胞の活性化は、厳しくコントロールされている。
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