研究概要 |
アイソトープ標識技術を応用して,固形癌の内部照射ターゲティング療法の臨床応用を目標とする.アイソトープで標識されたモノクローナル抗体を体内に投与すれば,がん抗原発現部位のがん組織に特異的に集積する.造血器悪性腫瘍をターゲットとした研究では,放射線感受性や腫瘍組織へのアクセスなど固形癌よりも有利な点が多いため成績が良い.研究代表者の施設でも抗CD20モノクローナル抗体を治療用β線放出アイソトープであるY-90で標識したアイソトープ抗癌剤の臨床試験が進行中である.一方,固形癌を対象とした臨床研究では,進行期で腫瘍体積も大きな症例が多く,放射免疫療法にとって原理的に不利である.本研究では,治療用放射性アイソトープ標識方法を最適化し,最終的には固形癌に対する放射免疫療法の治療効果を臨床的に評価する. 抗腺癌モノクローナル抗体A7と治療用β線放出アイソトープのI-131および体内動態観察用のIn-111での標識方法をin vitroとin vivoで検討した.I-131標識モノクローナル抗体A7およびIn-111標識体もそれぞれ37MBq/mg以上の比放射能での標識が可能であった.さらに,新しい治療用アイソトープであるRe-186での標識も行い,十分な比放射能が達成できた.一方,標識彼の免疫活性を評価した.それぞれの免疫活性分画(inmunoreactive fraction)は,I-131標識抗体が74%であり,In-111標識抗体は83%,Re-186標識抗体は67%と免疫活性は標識後も十分保持された.ヒト大腸癌LS180移植ヌードマウスモデルに投与して,体内動態,抗腫瘍効果,毒性の評価を行った.本年度は,より小さな病変に対する治療効果を検討するために,腹膜播種モデルを作成し,I-131標識抗体とRe-186標識抗体A7を投与した.その結果,Re-186標識抗体の方がI-131標識抗体よりも1.6倍腫瘍への吸収線量が増加することが判明し,Re-186標識抗体の内照射治療における有用性が示された.
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