研究課題/領域番号 |
13470190
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
丸山 一雄 帝京大学, 薬学部, 教授 (30130040)
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研究分担者 |
柳衛 宏宣 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教授 (30212278)
笠岡 敏 帝京大学, 薬学部, 助手 (90338690)
滝澤 知子 帝京大学, 薬学部, 助手 (90260934)
小野 公二 京都大学, 原子炉実験場, 教授 (90122407)
篠原 厚子 順天堂大学, 医学部, 講師 (90157850)
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キーワード | 中性子捕捉療法 / DDS / リポソーム / トランスフェリン |
研究概要 |
中性子捕捉療法(BNCT)は、ホウ素の安定同位体(^<10>B)に熱中性子を照射することで生じるα線によって、癌細胞のみを殺傷することを狙った癌放射線療法の1つである。この治療法において必須なことは、^<10>B化合物を癌細胞内及びその近傍に局在化させることである。そこで我々は、高い腫瘍集積性を示すPEG-リポソームにトランスフェリン(TF)を結合させたTF-PEG-リポソームを用いて、in vitro及び担癌マクスにおいて癌組織さらには癌細胞内に内在化させ、より効果的なBNCTについて検討した。 【方法】BSH封入リポソームの調製:TF-PEGリポソーム(^<10>B-TF-PEG-LP)は、DSPC/Chol=1:1(m/m)にDSPE-PEG、DSPE-PEG-COOHをそれぞれ5及び1mol%添加し、REV法及びEXTRUSION法にて、平均粒子径を約100nmに調製した。TFの付与はEDC法にて行った。^<10>B濃度は中性子即発γ線分析にて定量した。マウスに対する癌集積性とBNCTの検討:Colon26担癌マウスに対して、BSH水溶液またはBSH封入PEG, Bare, TF-PEGリポソーム尾静注し、経時的な体内分布と癌集積特性を調べた。癌集積^<10>B量と血中濃度の関係を調べ、BNCTのタイミングを調べた。2×10^<12>n/cm^2の熱中性子の照射を行い、癌縮小と延命効果を検討した。 【結果・考察】Colon26担癌マウスにおける体内分布:TF-PEGリポソームはPEG-リポソーム同様の血中滞留性とRES回避特性を示し、静注24時間までに固形癌に集積した。それ以降120分にかけてTF-PEGリポソームの場合のみ、高い癌組織中^<10>Bを維持させることが可能であった。これは、TF-PEGリポソームが、癌組織に移行した後癌細胞に高発現しているトランスフェリンレセプターを介したエンドサイトーシスによって、細胞内に内在局在化した結果であると考察された。In vivoにおけるBNCTにおいて、血中^<10>Bが限りなく低いことが重要である。本実験から、TF-PEGリポソームのみが、この条件を満たすことのできるキャリアーであることが判明し、中性子照射によって延命効果の結果も得られた。今後、詳細な検討を行い条件を整えれば、理想的なBNCTシステムが構築できることが判明した。
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