スタンレー脳バンクより、躁うつ病患者、精神分裂病患者、うつ病患者、対照群、各15例、合計60例分の前頭前野の凍結脳サンプルの供与を受けた。このサンプルよりRNAを抽出し、その品質を変性アガロースゲル電気泳動にて確認した。更に、cDNAを合成し、in vitro転写によりcRNAを得た後、これを断片化し、ハイブリダイズを行って、GeneChip解折を行った。まず、test2チップによりRNAの品質を確認し、電気泳動の結果と合わせて検討したところ、測定に用いることができるサンプルは50検体と考えられたため、これらの検体につき、12651個の遺伝子の発現量を測定できるU95Aチップを用いて、GeneChip解析を行った。これらのサンプルを、その由来に関して盲検的に、既報の精神分裂病において発現が変化している遺伝子のリスト(Hakakら2001)を用いてクラスター解析を行い、16サンプルを精神分裂病患者と推定した。これを実際の由来と照合したところ、16名中半数は実際に精神分裂病患者の検体であり、精神分裂病における遺伝子発現変化に特定のパターンがあることが推定された。また、スタンレー脳バンクの躁うつ病患者サンプルを混合してDNAマイクロアレイ解折を行った結果(Bizchlibnykら2001)は、特定の1名における大きな遺伝子発現変化に影響されている可能性が考えられた。躁うつ病群で有意に発現が変化し、投薬、死因、性別、年齢などの交絡因子の影響が否定されるような遺伝子を深索したところ、3つの遺伝子が同定された。今後、これらの結果を更に詳細に検討すると共に、EST(expressed sequence tag)を搭載した他のチップについても検討していく予定である。
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