研究概要 |
神経原線維変化はアルツハイマー病の病理学的特徴のひとつであるが、それを構成するリン酸化タウ蛋白の生成機序については不明な点が多い。リボソームへのストレス(リボトキシックストレス)が、タウ蛋白リン酸化をともなう細胞死を誘導することを確認するために、リボトキシックストレスを誘導するanisomycine, T2 triolを培地に添加したところp38MAPKおよびSAPKは活性化し、タウ蛋白はp38MAPKおよびSAPKがリン酸化することのできるThr231/Ser235部位、Ser396/404部位、Ser422部位ではリン酸化が亢進した。また、anisomycine, T2 triolを培地に添加した系にてSB202190(p38MARKインヒビター)を同時に添加すると、SB202190を添加しなかったものに比べてタウ蛋白のリン酸化は抑制された。また、lithium(グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)インヒビター)を添加すると、lithiumのみの添加にてタウ蛋白は脱リン酸化されたが、さらにanisomycine, T2 triolを添加すると、タウ蛋白のリン酸化はlithiumのみを添加したものに比べて亢進した。よって、リボトキシックストレスによるタウ蛋白のリン酸化はGSK3には非依存的で、p38MAPKおよびSAPKの両方を介しているものと推定された。 さらに核酸を酸化するためにrose bengalまたはmethylene blueを添加し、光照射を行うと、SAPK活性とタウ蛋白のリン酸化(Ser396/404部位)が亢進した。この変化は、azideによって強く阻害され、N-acetyl-cysteinによってもある程度抑制され、この実験系におけるタウ蛋白リン酸化が核酸への酸化ストレスに依存することが示唆された。
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