神経変性疾患における終末糖化産物(AGE-2構造体)の細胞障害機構の解明

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13470197
• 研究機関: 北陸大学
• 研究代表者: 竹内 正義 北陸大学, 薬学部, 講師 (20154982)
• 研究分担者: 佐々木 信幸 札幌医科大学, 医学部, 助手 (60315497) ; 菊地 誠志 北海道大学, 医学部, 助手 (10271660)
• キーワード: 終末糖化産物 / Advanced Glycation End-product / AGE-2構造体 / Aβ(1→40) / AGE-2化Aβ(1→40) / グリケーション / アルツハイマー病 / 神経変性疾患

研究概要

アルツハイマー病(AD)をはじめとする多くの神経変性疾患では、共通に異常タンパク質の産出、蓄積が観察され、その後共通の分子メカニズムによって神経細胞の変性と死が引き起こされると想定されている。申請者は、この病的な異常タンパク質の蓄積ならびに神経細胞の変性と死に終末糖化産物(AGE : Advanced Glycation End-products)が直接関与しているとする仮説に基づき、これまで研究を遂行して来ている。
平成13年度補助金により、申請者が世界に先駆けて発見した新規終末糖化産物(AGE-2構造体)が、神経細胞培養系において直接的な細胞毒性(アポトーシスによるニューロン死)を示すのみならず、神経細胞等に栄養素を供給している血管内皮細胞にも直接作用して血栓形成や虚血傾向を示すことを明らかにした。すなわち、AGE-2構造体は神経細胞に直接ダメージを与えるのみならず、血管内皮細胞にも働いて間接的に神経細胞の変性と死を加速することが示唆された。現在、AGE-2化Aβ(1→40)の作製条件を検討中である。
また、脳血管の周りを取り囲み、神経細胞への栄養素等の受け渡しならびに脳の微細構造の保持を担っているとされるアストロサイトの初代細胞培養系を確立し、各種AGEの作用を検討した結果、AGE2構造体はアストロサイトにも直接細胞毒性を示すことが明らかとなった。さらに、各種AGE抗体を用いたAD脳の免疫染色の結果、老人斑とアストロサイト、神経原線維変化(NFT)の全てにAGE-2構造体が存在していることが明らかとなり、AGE-2構造体がニューロンのアポトーシスを起こし易いと言う培養細胞系での結果と一致することが示された。現在、AD患者からの血液および脳脊髄液の採集のための準備を行っている。
一方、孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)脊髄にもAGEの蓄積が観察されており、また脳脊髄液中にもAGE2構造体が存在することを確認した。

研究成果

• [文献書誌] 山岸昌一, 竹内正義 他7名: "Advanced glycation end products-induced apoptosis and overexpression of vascular endothelial growth factor in bovine retinal pericytes"Biochem. Biophys. Res. Commun.. 290(3). 973-978 (2002)
• [文献書誌] 竹内正義 他6名: "Immunological detection of a novel advanced glycation end-product"Mol. Med.. 7(11). 783-791 (2001)
• [文献書誌] 山岸昌一, 竹内正義, 牧田善二: "Advanced glycation end products and the pathogenesis of diabetic nephropathy"Contrib. Neplirol. 134. 30-35 (2001)
• [文献書誌] 山本靖彦, 竹内正義 他10名: "Development and prevention of advanced diabetic nephropathy in RAGE-overexpressing mice"J. Clin. Invest.. 108(2). 261-268 (2001)
• [文献書誌] 遠藤美紀子, 竹内正義 他8名: "Increased levels of vascular endothelial growth factor and advanced glycation end products in aqueous humor of patients with diabetic retinopathy"Horm. Metab. Res.. 33(5). 317-322 (2001)
• [文献書誌] 和田龍一, 竹内正義 他6名: "Effect of OPB-9195, anti-glycation agent, on experimental diabetic neuropathy"Eur. J. Clin. Invest.. 31(6). 513-520 (2001)
• [文献書誌] 竹内正義, 牧田善二: "Alternative routes for the formation of immunochemically distinct advanced glycation end-products in vivo"Curr. Mol. Med.. 1(3). 305-315 (2001)
• [文献書誌] 菊地誠志 他2名: "Prostaglandin El protects cultured spinal neurons against the effects of nitric oxide toxicity"Neuropharmacology. (印刷中). (2002)
• [文献書誌] 佐々木信幸, 竹内正義 他6名: "Immunohistochemical distribution of the receptor for advanced glycation end products in neurons and astrocytes in Alzheimer's disease"Brain Res.. 888(2). 256-262 (2001)
• [文献書誌] 柳瀬由紀子, 竹内正義: "Medical Technology:わだい「生体内AGE産生過程と神経細胞毒性」"医歯薬出版. 2 (2001)
• [文献書誌] 山岸昌一, 牧田善二, 竹内正義: "内科、特集:最近注目されてきた疾患、病態、治療「糖尿病腎症の発症機構とその治療」"南江堂. 4 (2001)
• [文献書誌] 菊地誠志, 竹内正義 他5名: "In molecular mechanism and therapeutics of amyotrophic lateral sclerosis : 「Abnormal glycation in ALS」"Elservier Science(Amsterdam). 9 (2001)
• [文献書誌] 新保和賢, 菊地誠志 他4名: "In molecular mechanism and therapeutics of amyotrophic lateral sclerosis : 「ROS/RNS dicarbonyl stress to spinal motor neurons in vitro」"Elservier Science(Amsterdam). 7 (2001)