研究概要 |
造血前駆細胞の増殖とアポトーシス制御に重要な役割を果たす造血サイトカインのInterleukin 3(IL-3)や、赤芽球系造血細胞の増殖と分化を調節するエリスロポエチン(Epo)の受容体は,JAK2やLyn等のチロシンキナーゼの活性化を介してSTAT5の活性化をもたらす以外に、アダプター蛋白CrkLおよびCrkLと結合するRasファミリーのGEFであるC3Gとを介して、Ras/MAPキナーゼ経路の活性化とともに、β1インテグリンを介して造血細胞の細胞接着の亢進をもたらすことを、私達はこれまでに示してきた。今回の研究では、C3Gにより活性化される事が知られているRasファミリーのRap1に関して検討を行い、EpoやIL-3の刺激によりCrkL/C3G経路を経てRap1が造血細胞内で一過性に活性化され、β1インテグリンを介した細胞接着を誘導するを明らかにした。また、β1インテグリンを介したOutside-InシグナルによってもCrkLを介してRacが活性化される供に、Jak2依存性にIl-3やEpo受容体のチロシンリン酸化を生じることを見出し報告した。Interferron-αによるRap1の活性化機構についても検討を行い、CrkLが必須の役割を果たすことを見出して報告した。以上の結果より、種々のサイトカインはRap1やRac等の低分子量GTPaseを活性化することにより、造血前駆細胞のインテグリンを介した細胞接着や増殖の調節制御に重要な役割を果たすと供に、インテグリンからのシグナルによってもサイトカイン受容体の活性化と低分子量GTPaseが活性化を生じ、これらのシグナルの統合機構にCrkLが重要な役割を果たすことが示唆された。
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