研究概要 |
再生不良性貧血患者の骨髄において造血幹細胞の傷害に関わっているCD4陽性T細胞クローンをHerpesvirus saimiriにより不死化し,HLA-DRB1^*1501陽性健常者から得られたCD34陽性細胞による刺激に対してこのT細胞が特異的な増殖反応を示すことを確認した.CLIP置換型Ii鎖遺伝子発現ベクターを用いてこのT細胞のエピトープを決定するため,DRB1^*1501を含むHLAクラスハプロタイプの中で,どのアレルが抗原提示に関わっているかを,各HLA分子に対する抗体を用いて現在検討中である.一方,SEREX法によって同定したαグロピンペプチド(αグロビン^<1-101>)については,このペプチドとGSTとのfusion蛋白を作成し,精製蛋白に対する抗体の有無を多数の再生不良性貧血患者について決定した.その結果,αグロビン^<1-101>に対する抗体は,健常者21例中2例,他の貧血患者10例の1例にしか認められなかったが,再生不良性貧血患者では25例中21例に検出された.抗αグロビビン^<1-101>抗体を検出した患者の末梢血から樹状細胞(DC)を誘導後,αグロビン^<1-11>をパルスしたDCと共に自己のT細胞を3週間培養したところ,培養T細胞はαグロピン^<1-11>をパルスしたHLA-A^*0201陽性のJY細胞に対して,用量依存的に細胞傷害活性を示した.HLA-A2-IgG fusion蛋白とフローサイトメトリーを用いた検討により,この培養T細胞中には,αグロピン^<1-11>に特異的なCD8陽性T細胞が0.55%含まれることが示された.さらに,この培養T細胞は自己の造血前駆細胞由来コロニーをCFU-GMで対照の43%,BFU-Eコロニーで50%に減少させた.以上の所見から,αグロビンは再生不良性貧血における自己抗原の一つであると考えられた.
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