B細胞リンパ腫のrecurrentな染色体転座であるt(3;6)(q27;p21)によってhistone H4遺伝子とBCL6遺伝子が結合する。t(3;6)転座の転座接合部の塩基配列を解析したところ両切断点近傍に複数のpoint mutationが認められ、t(3;6)転座は免疫グロブリン遺伝子のsomatic hypermutationのメカニズムを介して生じると考えられた。Bcl-6を高発現した細胞の遺伝子発現プロフィルを解析すると、多くの遺伝子の発現がdown-regulateし、Bcl-6が転写抑制因子であることと一致した。次に、H4/BCL6 fusion geneをCOS7細胞に導入したところ、Bcl-6蛋白の発現レベルが著しく亢進した。従って、t(3;6)転座によって一時的にせよBcl-6蛋白の発現が亢進し、細胞の遺伝子発現プロフィルを変化させるに至ることが明らかになった。続いて、H4/BCL6 fusion geneをtransgeneとするtransgenic mouse(Tgマウス)の作製を試み数匹のTgマウスが得られたが、現在までのところtransgeneの発現を確認できていない。今後transgeneのプロモーターを変更することを検討している。さらに、t(3;16)(q27;p11)転座を有するB細胞リンパ腫細胞株の解析により、3q27に存在するBCL6遺伝子が16p11に存在するインターロイキン21受容体(IL-21R)と融合していることを見い出した。IL-21R/BCL6 fhsion geneをCOS7細胞に導入したところ、t(3;16)転座によってBCL6の発現レベルが亢進することが示された。また、リンパ系腫瘍におけるIL-21Rの発現をスクリーニングしたところ、B細胞リンパ腫や成人T細胞白血病(ATL)においてその発現が認められた。この結果から、BCL6転座のパートナー遺伝子もリンパ腫の発症に関与している可能性が示唆され興味深い。
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