腎臓の幹細胞単離及び再生医療応用への基礎的検討

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13470211
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 今井 圓裕 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (00223305)
• 研究分担者: 伊藤 孝仁 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員 ; 竹中 優 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (20222101) ; 守山 敏樹 大阪大学, 健康体育部, 講師 (30283815) ; 猪坂 善隆 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
• キーワード: GFPラット / SP細胞 / PDGF / レチノイン酸

研究概要

我々は、平成13年度に、骨髄由来幹細胞がin vivoにおいて、メサンギウム細胞に分化する事を確認し、論文化した。この骨髄由来幹細胞からミサンギウム細胞への分化能をさらに詳細に検討し、かつ、分化に必要な条件を検討するために、骨髄細胞全分画から未分化幹細胞を粗生成する方法を、細胞外基質への親和性を利用することによって確立した。その結果、4型コラーゲンならびに高濃度の血小板由来増殖因子(PDGF-BB)、レチノイン酸の存在が重要な役割を担っていることが明らかとなった。実際に、4型コラーゲンを発現している正常糸球体局所において、強制発現によりPDGF-Bの量を増加させてやると、骨髄由来幹細胞がメサンギウムに遊走し、メサンギウム細胞へと分化することが明らかとなった。現在、基質への親和性を利用して、さらに簡便・高速に骨髄幹細胞を濃縮する方法を開発・応用中である。
また、平成13年度に、我々は、ネフロン発生に関わる遺伝子を明らかにする目的、でネフロン新生部分のRNAを、特異的かつ高品位に抽出する方法を確立した(トルネード抽出法)。この方法を基礎に、いくつかの興味深い遺伝子情報を得ており、幹細胞から特定の腎構成細胞に分化誘導するために有用な分子を発見すべく、我々の開発したin vitroの系を利用して検討を行っている。また、幹細胞のマーカーは、いまだに得られていないものの、Hoechst色素による核染色を利用した幹細胞精製法(sp細胞)を併用し、腎臓に駐在する幹細胞の特性について解析を行っているところである。

研究成果

• [文献書誌] Ito, T., Suzuki, A., Imai, E., Okabe, M., Hori, M.: "Bone marrow is a reservoir of repopulating mesangial cells during glomerular remodeling"J. Am. Soc. Nephrol.. 12. 2625-2635 (2001)
• [文献書誌] Ito, T., Suzuki, A., Okabe, M., Imai, E., Hori, M.: "Application of bone marrow-derived stem cells in experimental nephrology"Exp. Nephrol.. 9. 444-450 (2001)
• [文献書誌] Iwatani, H., Ito, T., Imai, E., Suzuki, A., Ueda, N., Hori, M.: "In vitro conversion of bone marrow cells into mesangium-like cells"J. Am. Soc. Nephrol.. 12. 520A (2001)
• [文献書誌] Suzuki, A., Ito, T., Imai, E., Iwatani, H., Fujii, T., Hori, M.: "Retinoic acid-generating enzyme, retinaldehyde dehydrogenise type 2 (RALDH2) regulates the differentiation of renal epithelial cells"J. Am. Soc. Nephrol.. 12. 527A (2001)
• [文献書誌] Ito, T., Suzuki, A., Imai, E., Iwatani, H., Isaka, Y., Nakamura, H., Hori, M.: "Effect of PDGF-B overexpressed in normal rat kidneys on the recruitment and differentiation of bone marrow-derived cells"J. Am. Soc. Nephrol.. 12. 679A (2001)