研究概要 |
1.目的:神経回路形成の基盤をなす大脳皮質神経細胞移動抑制をもたらす胎生期低線量放射線照射モデル系において、これまで本研究代表者らが探索してきた、発現変動する遺伝子群をin vivo電気穿孔法によりマウス胎仔脳に導入し、それらの機能を評価することを目的とする. 2.経過(1)胎生期マウス胎仔全脳における低線量X線照射後12時間の時点で発現上昇する遺伝子として新たに,SUMO, Rab, Rab結合蛋白などを見出した.RabやRab結合蛋白は,低線量X線照射によって線量依存的に遺伝子発現が上昇した.これら蛋白を発現させるためマウスcDNAをクローニングした. (2)子宮内マウス胎仔大脳皮質神経細胞に対するin vivo電気穿孔法を用いた遺伝子導入法の条件設定を行った.胎生14.5日目のマウス終脳側脳室周囲にある,増殖中の神経前駆細胞EGFP発現プラスミドを導入し,発生を2日間継続させた後に観察した.遺伝子を導入された細胞がEGFPを産生し,緑色蛍光を発することが確認され,それらの分布は,軟膜面へと遊走中の神経細胞の分布とよく一致するものであり,ほぼ想定した通りの結果を得ることができた.Rab, SUMOおよび既知の神経細胞移動関連遺伝子NUDELを今年度の解析対象として,野生型蛋白そのものやドミナント・ネガティブ体を,CAGプロモーター支配下にEGFPと共に多量発現させるプラスミドを構築した.移動中の神経細胞の形態を観察記録するための画像解析プログラムを作成した.発生・成熟過程にある脳において,対象とする伝子群の機能を解析するための基盤を作ることができた. (3)空間特異的・時期特異的に対象とする蛋白を胎生期大脳皮質において発現させるため,マウスTIS21およびT alphal-alpha-tubulinプロモーターをクローニングした.
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