申請者は、代表的核内レセプターであるグルココルチコイドレセプター(GR)の分子生物学的研究を過去10年間にわたり継続し、その転写調節における意義を明らかにしつつある。そこで、これまでの研究で得られた成果と技術を基盤に、GRをモデルとして核内レセプターによる生体機能調節機構を明らかにすることを目的とした。 1.GR遺伝子破壊細胞を作成しGR標的遺伝子を同定するとともにその機能を明らかにした RNAiを用いてGRをノックダウンする系、Cre-loxシステムを用いたアデノウイルスによるGR発現系を立ち上げ、すでにいくつかの細胞で動作を確認した。GR標的遺伝子発現を確認したとともに、各組織におけるグルココルチコイドの作用機構を解明した。 2.GR遺伝子破壊マウスを用いてGRとその標的遺伝子の生理機能に与える作用を明らかにした G.Schutz博士(ドイツ癌研究センター)との共同研究により、GR遺伝子破壊マウスを各種条件下で飼育後屠殺し、各組織よりRNAを抽出後DNAチップなどを用いてGR標的遺伝子の発現プロフィールを解析した。 3.グルココルチコイドによる組織特異的遺伝子発現調節機構を明らかにした 合成グルココルチコイドであるコルチバゾールCVZを用いて、GRのリガンド結合領域の機能的多様性を実証した。また、AF-1転写活性化領域に作用する共役因子のレパートリーはCVZ結合GRとDEX結合GRでは明らかに異なり、リガンドによる組織特異的グルココルチコイド応答性遺伝子発現機構が明らかにされた。質量分析法を用いたプロテオーム解析やクロマチン免疫沈降法などを用いてより詳細な分子機構を解明した。
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