研究課題/領域番号 |
13470218
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
内分泌学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 裕 京都大学, 医学研究科, 助教授 (40252457)
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研究分担者 |
細田 公則 京都大学, 人間環境学研究科, 助手 (40271598)
菅 真一 国立循環器病センター研究所, 室長 (70273456)
小川 峰太郎 熊本大学, 発生医学研究センター, 助教授 (70194454)
梅村 和夫 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40232912)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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キーワード | 血管ホルモン / ナトリウム利尿ペプチド / アドレノメジュリン / 内皮細胞 / 血管平滑筋細胞 / 血管再生 / ES細胞 / cGMP |
研究概要 |
我々はこれまで、一貫して血管局所で産生される血管ホルモンの血管リモデリングにおける意義に注目し研究を続けてきた。すなわち、血管収縮ホルモンであるアンジオテンシンIIが血管増殖に対し促進的に作用することを報告し、一方強力な血管平滑筋弛緩作用を有するナトリウム利尿ペプチド(ANP、BNP及びCNP)が血管弛緩のみならず血管増殖に対しても抑制的に作用すること、更にCNPが血管内皮細胞において生合成され、一酸化窒素(NO)と並ぶペプチド性の内皮由来血管弛緩因子(EDRF)として作用することを発見し、"血管壁ナトリウム利尿ペプチド系"という新しい概念を提唱した。また、CNPのin vivo gene transferにより血管損傷に対して血管平滑筋細胞増殖抑制、分化誘導が起こることを明らかにした。また、血流刺激を内皮細胞が感知し、内皮由来血管作動性物質が協調的な遺伝子発現制御を受け、血管弛緩、血管増殖抑制の方向に働くことを報告した。一方、最近我々はマウスES細胞(Embryonic Stem Cells)から抗Flk1を用いたFACSによるcell sorting技術により、VEGF受容体の一つであるFlk1陽性細胞から血管を構成する内皮細胞及び血管平滑筋細胞の双方をin vitro培養系で分化誘導できることを明らかにし、ES細胞由来Flk1陽性細胞が"血管前駆細胞(Vascular Progenitor Cells ; VPC)"であることを報告した。動脈硬化症は、血管内分泌学的には内皮細胞の機能低下に伴う血管ホルモン分泌制御機構の破綻の結果と捉えることができる。本研究は、血管ホルモンの血管発生再生における意義を解明し、その成果をもとに我々の同定したES細胞由来血管前駆細胞を用いた新しいアプローチにより血管再生を図り、虚血に陥った臓器の保護再生治療への応用を検討することを目的とした。 本研究課題で以下の成果を得た。 我々がこれまで開発してきた種々のナトリウム利尿ペプチド系遺伝子改変動物、すなわち、BNPトランスジェニックマウス、cGKトランスジェニックマウス、及びcGKノックアウトマウスを用いて、ナトリウム利尿ペプチド/cGMP/cGMP依存性プロテインキナーゼ(cGK)経路が大腿動脈結紮阻血後血管新生モデルにおいて、血管保護再生に対して促進的に作用することを明らかにした。また我々が発見した内皮由来血管弛緩ペプチドであるCNPのアデノウィルスを用いた生体への遺伝子導入により、静脈グラフトモデルにおいて損傷内皮再生が促進し抗血栓性等内皮機能が回復すること、また大腿動脈結紮虚血部の血管再生を有意に促進することを報告した。in vitroのwound healing assayを用いて、このCNPの内皮再生作用の少なくとも一部は内皮細胞の遊走・増殖促進作用であることを明らかにした。また、CNPと同様に血管壁においても産生される血管弛緩ペプチドであるアドレノメジュリン(AM)にも同様の作用が認められることも明らかにした。更に、ナトリウム利尿ペプチド/cGMP/cGK経路による血管保護再生の分子機構についても検討した。その結果、低分子量GタンパクRho及びその下流分子であるRhoキナーゼが血管平滑筋細胞の遊走・増殖を促進すること、更にcGKはRhoを直接リン酸化することで、その機能を抑制することを報告した。一方、培養内皮細胞においてナトリウム利尿ペプチドは、cGKを活性化することにより、MAPキナーゼの一つであるErk1/2及びAktを活性化し、その遊走・増殖を促進することを証明した。一方、我々は同定したES細胞由来VPCの血管再生医療への応用の可能性について検討した。すなわち、マウスES細胞由来VPCをin vitroでVEGF存在下で培養し、内皮細胞と血管平滑筋細胞に分化させVEGF産生の豊富なラットグリオーマ細胞株であるC6腫瘍移植血管新生モデル及び大腿動脈結紮阻害血管新生モデルに移植することにより、ES細胞により血管が構築され、更に移植した局所の血流を改善することを明らかにした。この研究成果は、ES細胞由来血管前駆細胞の移植による血管再生治療の可能性を示唆するものである。
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