日本人の2型糖尿病はインスリン分泌不全を一義的な成因とするので、本研究では膵β細胞におけるカルパイン10の機能に焦点を当て、カルパイン10異常がインスリン分泌不全を惹起する機構の解明を目指した。カルパイン10は多くの組織で発現するプロセシング蛋白であることより、標的基質や周辺因子が共役グループとして発症に働くと考えられる。そこでカルパイン10を過剰発現させ既存のマイクロアレイ並びに、独自の膵島特異的cDNAマイクロアレイを用いて、mRNA発現が変化する関連遺伝子群を網羅すべく検索を進めて、再現性のある数個の発現の変化する遺伝子を同定している。またカルパイン10関連分子を共同研究によりBIA-MS/MSを用いて蛋白レベルで網羅的に獲得し現在個々の候補分子に関して詳細に検討を加えている。また個体レベルでの検討を加えるために代表者は膵β細胞でカルパイン10を約40-100倍過剰発現しているトランスジェニックマウスを作成することに成功した。このマウスの単離膵島を用いて、既知のMODY遺伝子を含む糖尿病関連分子の網羅的リアルタイムPCRを施行し発現レベルのプロファイリングを施行した。またカルパイン10ノックアウトマウスの作成にも成功しており、これの単離膵島を用いてアポトーシスにおけるカルパイン10の役割を明らかにした。 また代表者は遺伝学的背景の全く違う2つの民族の症例-対照関連解析で、このカルパイン10がインスリン分泌並びにインスリン作用両方に影響を与えていることを明らかにしていたが、詳細な連鎖不平衡解析を展開し日本人特異的な変異を同定し、2型糖尿病の民族特異性を考える上でのマイナーアリル検索の重要性を遺伝学的にも証明した。
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