研究概要 |
2型糖尿病モデルマウスの交配系を用いた、血糖値、体重、血清インスリン値などの定量的形質を決める座位(Quantitative Trait Loci : QTL)解析は、糖尿病発症を修飾する遺伝子座位、さらには遺伝子本体を同定することが可能である。我々は、新たな糖尿病の疾患感受性遺伝子を同定することを目的として、QTL解析を行い、本年度の研究期間で以下の知見を得た。 1)昨年度までの解析結果より、2型糖尿病モデルマウスのdbマウスとC3H/HeJ, DBA/2Jの2系統の正常マウスとの雑種第2世代を対象にした、計約1,600匹の大規模なQTL解析により、統計的有意水準(Lod Score 2.8以上)を超える座位が、db x C3H/HeJ交配系で18箇所、db x DBA/2J交配系で17箇所、2系統に共通するQTL座位を7箇所を新たに見出した。本年度の解析では、これらの座位の内、C3H/HeJ, DBA/2J交配系で重複して抽出され、Lod scoreが4以上で且つピークがシャープ、genetic varianceが高く、コンジェニックマウス作製時に糖尿病の表現型に与える効果が大きいと考えられる4座位をターゲット領域として選定した。 2)上記4つの候補領域(QTL座位)について、ターゲット領域以外の他の領域が、すべて均一に系統の全く異なるマウス由来の染色体に置換された「コンジェニックマウス」を作製した。 3)QTL座位を保持した第4世代の戻し交配マウスを作製するにあたり、この間、約1万匹以上のマウスを解析した結果、基準系統マウスへの染色体置換率は理論値と同等の95%を確保した。同時に、4つのQTL座位から、今後、ターゲット遺伝子を同定する上で必須である「サブコンジェニックマウス」を十分な種類獲得することができた。
|