研究概要 |
メイラード反応後期生成物(AGE : Advance Glycation Endproducts)によって生体蛋白に不可逆的な翻訳後修飾反応が起こる。その結果生成した構造物が種々の細胞とAGE受容体を介して反応し、糖尿病性血管合併症の発症/進展に至るものと想定されている。CD36は酸化LDL受容体として動脈硬化惹起的(atherogenic)に作用しており、又,SR-BIはコレステロール逆転送系において、抹消細胞からHDLへのコレステロール搬出並びに肝臓におけるHDLのコレステロールエステルの選択的取り込みに関与し、抗動脈硬化的(anti-atherogenic)に作用する。我々はCD36及びSR-BIがAGE受容体であることを同定し、本課題研究では、CD36およびSR-BIに対するAGEの効果を具体的に解析した。従来のグルコースで修飾したAGE蛋白に加えて、メイラード反応の中間体アルデヒドとして最近注目されているグリコールアルデヒドやメチルグリオキサールで修飾したAGE蛋白もヒト単球マクロファージにおいて、CD36の発現をmRNAおよび蛋白レベルで増強させ、酸化LDLによる同細胞の泡沫化も促進させた。これらの現象は抗CD36抗体によって特異的に阻害された。一方、ヒト単球マクロファージからHDLへのコレステロール搬出現象もこれらAGE蛋白によって有意に阻害され、また、マウス初代培養肝細泡によるHDLのコレステロールエステルの選択的取り込み現象も、これらAGE蛋白によって効率的に阻害された。これらの結果は、生体で生成するCD36が介在する動脈硬化惹起性を促進し、SR-BIが介在する抗動脈硬化性を阻害することによって、全体として、動脈硬化に対して促進因子として作用していることを示唆するものである。
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