研究概要 |
腫瘍抑制遺伝子の変異検出のための汎用型酵母アッセイの開発を目的として以下の研究を行った。 1.酵母発現ベクターの構築 URA3マーカー遺伝子とCEN/ARS配列、AmpおよびColE1 Oriを持ち、CYCプロモーターで駆動され、ADE2を発現する酵母/大腸菌シャトルベクターpLS381を改良し、目的の酵母発現ベクターを構築した。 2.相同組換え部位をつけたPCR産物作製の方法の確立 相同組換えに必要な配列長を決定するために様々な長さの二本鎖オリゴDNAをPCR産物にカセット結合させた。その結果、酵母内相同組換えを正確に、かつ効率的に行う配列長は24bpであることが分かった。 第一段目のPCRで被検遺伝子の目的部位を増幅し、第二段目PCRで目的部位をさらに増幅するとともに相同組換え部位の配列を付加するNested PCR法を開発した。酵母内相同組換えの際にノイズとなるプライマーダイマーなどの副次的産物の生成は、PCR産物の1%以内に抑止し得るexternal primerとinternal primerの設計を完了した。 3.ストップコドンアッセイの実施と精度管理 腫瘍細胞株のmRNAおよびgenomic DNAについてBRCA1,APC,hMSH6,E-cadherin,hMLH1,PTEN,NF-2などの遺伝子についてストップコドンアッセイを実施した。いずれの遺伝子についても、任意の目的部位について1.0kb〜1.5kbの増幅産物が得られ、その相同組換えにより99%以上の精度でベクター内に産物がin-frameに組み込まれることを確認した。また、野生型サンプルをテストした場合には、変異を示す赤色コロニー出現がいずれも5〜10%以下に抑えられることを確認した。さらに変異体にてテストした場合には、赤色コロニー出現が変異体の含量に正比例して出現することを確認した。白色コロニー内のプラスミドを回収シーケンシングすると100%の確立で野生型を示すことを確認した。 以上の成績より、腫瘍抑制遺伝子の変異検出のための汎用型酵母アッセイが完成した。今後このアッセイを応用して各種癌症例で多種類の遺伝子につき変異を明らかにしていく予定である。
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