研究概要 |
【研究目的】本研究では、種々の組織内(特に末梢血・骨髄およびリンパ節)において腫瘍細胞数を定量的に測定することの可能なシステムを構築し、実際の様々な病態にある腫瘍患者由来の組織中に存在する腫瘍細胞数を定量、患者個体内における腫瘍細胞の病態体存的な動態の詳細を明らかにすることを目的とした。 【研究方法】P-E Biosystem社Sequence Detector 7700を用いてCytokeratin18(以下CK18),CK19,CK20,CEAmRNA発現量を、まず21種の細胞株で定量的に比較した。また、胃癌患者47例の骨髄中におけるそれぞれのmRNAの発現量を同様の方法で検討した。健常者(14症例)と非切除胃癌症例(19症例)における末梢血中のmRNA発現量も同様に比較検討した。 【研究成果】(結果)細胞株における検討では、CK18、19は全ての癌細胞で発現しており、発現量にも大差はないが、非癌細胞株でも発現を認めた。CK20発現は正常細胞では低値だったが、癌細胞での発現量もCK18、19に比較すると低値であった。CEAは癌特異性は高いが、癌細胞間で発現の差が大きく、検出感受性に問題があった。骨髄では、すべてのマーカーで少量の発現が認められたが、CK20で個人間の発現の差が認められ、検出群と未検出群の分類が可能であった。末梢血の検討ではmRNA発現量は健常者に対し非切除胃癌症例で有意に発現量が高く、特にCK19では健常者と非切除胃癌症例で有意に(p=0.0046)発現量の差が認められ、化学療法後の変化も観察可能であった。(考察)細胞株における検討により、癌細胞検出の標的として用いられてきた遺伝子の発現量に癌細胞間でも大きな差があることが明らかになった。骨髄における検討では、健常者との比較が困難であることが問題であるが、CK20が有望なマーカーであると考えられた。末梢血の検討では、CK18,CK19,CK20mRNA発現量は健常者と比較し非切除胃癌症例で高発現する症例が存在し、これらのマーカー特にCK19は有用であると考えられた。このようにRT-PCR法を用いた微量癌細胞の検出は将来性のある手法であるが、実際の臨床応用の際には複数の標的遺伝子を併用し、発現量の推移も観察することが重要と考えている。
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