研究課題
(1)血液適合性表面処理技術の確立血液適合化表面処理技術の最適化、評価:新たに開発したヘパリンコーティング材料は長鎖ジアルキル基を有する脂肪族系カップリング剤とヘパリンとのイオン結合型複合体であるが、高ヘパリン活性・基材を選ばずにコーティング加工が可能であること、簡便にコーティング処理が可能であることを同時に満足していることが確認された。各種基材に対する初期ヘパリン活性はいずれも20ml.U./cm2以上という高い値を安定して得ることが可能となった。(2)安全性、無毒性の保証に関する検討人工肺、遠心ポンプ、血液回路に本表面処理技術を施した場合の物理科学的、生物学的安全性・無毒性・長期保存安定性に関する検討を行い、急性毒性試験、遺伝毒性試験、亜急性毒性試験などの様々な生物学的安全性試験などいずれの試験において問題となる所見を認めず、安全性は極めて高いと判断された。(3)次世代型心肺補助装置の製作と評価(1)次世代型心肺補助装置の製作:上記の検討結果に基づき人工肺、遠心ポンプ・血液回路部分の全表面処理を行い、これらを一体化させて臨床前試験用の第一次試作モデルの開発を行った。(2)模擬循環回路および急性動物実験による流量特性の評価およびガス交換性能の評価:試作モデルの基本的性能についてポンプの駆出性能の評価および人工肺のガス交換性能の評価を行った結果、臨床使用上十分な性能が得られることが確認された。(3)慢性動物実験による評価と改良:抗凝固薬の全身投与を行わずに施行する1ヶ月間の慢性動物実験によって試作モデルの抗血栓性、血液適合性、駆出性能・人工肺ガス交換性能を評価したところ、駆出性能・人工肺ガス交換性能は極めて安定したまま維持しえたが、全10例の検討中、2例においては1週間以内に血液鬱滞部位に血栓形成を認めた。材料面、血液適合性表面処理技術、流体解析の各方面からこの血液鬱滞部位の血栓形成の問題に関して改良をはかる予定にある。
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