研究課題/領域番号 |
13470248
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
古川 博之 北海道大学, 大学院・医学研究科, 寄附講座教員 (70292026)
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研究分担者 |
上出 利光 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (00160185)
藤堂 省 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (60136463)
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キーワード | 遺伝子治療 / AdCD40Ig / Clamp Technique / ex-vivo / 肝移植 |
研究概要 |
当科ではCD40Ig遺伝子組み込みアデノウイルスベクターを開発し、ラット肝移植モデルにおいて1×1^9pfuをレシピエントに移植後単回投与することで、移植肝の長期生着とドナー種特異的な免疫寛容が導入されることを証明した。しかし、アデノウイルスベクターの全身投与は、ウィルスの全身散布に起因する臓器障害や産生物質に対する免疫反応、炎症反応などを惹起させ得る。これらの副作用を軽減させるために、より少ない量で十分な遺伝子導入効率を得ることを目的にして安全な投与経路、投与方法について研究を進める必要があるが、ex-vivo投与はグラフト摘出後、put-inまでの冷保存時間中に遺伝子導入することにより移植臓器に選択的に遺伝子導入でき、ウイルスの全身散布を避けることができるという利点を持つ。ex-vivo投与による遺伝子導入法に関しては、最近、Clamp Technique (CT)を用いることで遺伝子導入効率を上げることができるとの報告がある。これは、肝重量の40%に相当する容量のUW液にベクターを溶解、摘出肝の上下の肝静脈を遮断した状態で溶解液を注入することにより肝臓の末梢の血管床にもベクター溶解液が浸透し、遺伝子導入効率の向上に繋がるものである。しかし、これまで免疫抑制物質を遺伝子導入する方法で、CTを用いた実験はなされておらず、この方法が遺伝子導入効率を向上させることは証明されても、実際に移植肝の長期生着に繋がるか否かについては検証されていない。今回、我々はラット肝移植モデルにおいてAdCD40IgをCTを用いたex-vivo経路での遺伝子導入し、長期生着を得るために必要なベクター量、保存時間について検討し、さらにこの投与方法が全身投与に比べて利点があるか否かについて検証した。その結果、CTを用いることで保存時間を僅か10分としても、ベクターを全身投与した場合とほぼ同等の長期生着を得ることができ、更に、保存時間を3時間と延長させることにより長期生着に必要なベクター量を半分に減らすことが可能になった。この手法を臨床の移植医療に応用するためには、大動物の移植実験で遺伝子導入効率や免疫抑制効果、そして安全性を詳しく検討する必要があるが、今後、この遺伝子導入方法が有望な手技になり得ると考えられた。
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