研究課題/領域番号 |
13470256
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
竹山 宜典 神戸大学, 医学部・附属病院, 講師 (70263374)
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研究分担者 |
上田 隆 神戸大学, 医学部・附属病院, 助手
黒田 嘉和 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (70178143)
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キーワード | 重症急性膵炎 / 臓器障害 / アポトーシス / 免疫抑制 / 細胞内カルシウム / ヘマチン |
研究概要 |
1.アポトーシス誘導機構の解析:重症急性膵炎における急性期の臓器障害機構には、臓器を構成する細胞の死がかかわっていると考えられ、その一形態としてアポトーシスが存在することを報告してきた。本年度は、膵炎腹水中に含まれるヘモグロビン変性物質であるヘマチンの関与を解析した。膵炎腹水は正常ラットの腹腔内に注入すると肝臓にアポトーシスを惹起するが、腹水中に含まれるヘマチン量と同等のヘマチンを腹腔内に注入しても肝臓にアポトーシスが誘導された。一方、in vitroでも膵炎腹水と同じく、ヘマチンもラット初代培養肝細胞やヒト肝腫瘍培養細胞であるhuH-7にアポトーシスを誘導することを見出した。さらにヘマチンがこれらの細胞の細胞内Ca2+を劇的に上昇させることも確認した。また、膵炎腹水を分子量によって分画し、腹水中にヘマチン以外のアポトーシス誘導活性を確認した。ヘマチンは血清アルブミンによってアポトーシス誘導能が中和されるが、腹水中の2つの誘導活性のうち一方はアルブミンにより中和されるが、もう1つの分画は中和されなかった。膵炎腹水中のアポトーシスを介する臓器障害因子としてのヘマチンの存在が確認された。 2.リンパ系組織障害の解析ラット実験膵炎モデルのリンパ系組織における変化を解析し、その免疫能に及ぼす意義と、.その分子機構に関して検討した。まず、ラット重症急性膵炎モデルの脾臓の変化について解析した。ラット脾臓は膵炎発症6時間後から著明な萎縮を示し、脾細胞数も顕著に減少していた。われわれはこのような変化を、すでに胸腺で確認報告しているが、胸腺細胞に顕著なアポトーシスが脾細胞には見られず、脾細胞の減少は、末梢リンパ球の末梢血中への動員によることが明らかになった。すなわち、末梢リンパ球は膵炎発症6時間ですでに約25%まで減少し、それは膵炎作成前に脾摘うを行うとさらに減少した。一方、脾細胞の機能解析を行ったところ、膵炎時には脾細泡はTh1/Th2両反応ともに抑制されていたが、特にTh1反応の抑制が著しく、Th1反応抑制の方向へ傾いていた。重症急性膵炎の後期感染成立に関与する、免疫抑制機構の一端が明らかとなった。
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