研究概要 |
1.スキルス胃癌の発育進展に,胃由来の線維芽細胞から産生される増殖促進物質がparacrine的に作用していることが明らかとなった.この増殖促進物質は,熱処理で失活し,HPLCで10KDaに増殖活性を示したことより,分子量10KDaの蛋白と考えられた. 2.癌細胞に発現するICAM-1は,白血球に発現するLFA-1との接着を介して腫瘍免疫に関与していることが知られている。そこで,マウスリンパ節転移モデルを用い,癌細胞にICAM-1遺伝子を導入することによるリンパ節転移抑制効果を検討した。胃癌リンパ節転移株OCUM-2MLN(以下2MLN)にICAM-1遺伝子をリポフェクション法にて導入し,ICAM-1高発現株2MLN/ICAMを樹立した。この2つの細胞株を用いて末梢血単核球(以下MNLs)との接着率,MNLsによるcytotoxicityについて検討を行った。MNLsの接着率は2MLNおよび2MLN/ICAMに対し,30分間でそれぞれ0%,31.5%,60分間で0.01%,81.8%であり,2MLN/ICAMに対する接着率が有意に高かった。MNLsによるcytotoxicityは,2MLNに対しては12,24,36時間後にそれぞれ7.37%,32.57%,35.55%,2MLN/ICAMに対しては16.19%,48.83%,62.3%であり,いずれの時点においても2MLN/ICAMに対するcytotoxicityが有意に高かった。胃癌細胞へのICAM-1遺伝子の導入はリンパ節転移に対し高い抑制効果が認められた。
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