研究概要 |
1.胃線維芽細胞から産生されるスキルス胃癌増殖促進因子は,熱処理で失活したこと,HPLCで約10KDaに増殖活性を示したことなどより,分子量約10KDaの蛋白と判明した.次に,既存の増殖因子との関連を検討した。 方法は、スキルス胃癌細胞株、高分化型胃癌細胞株、種々の臓器由来の線維芽細胞株を用い、1)線維芽細胞の培養上清添加によるスキルス胃癌細胞の増殖促進作用2)keratinocyte growth factor(KGF)のスキルス胃癌細胞、高分化型胃癌細胞への増殖促進作用を検討した。その結果、1)胃線維芽細胞のみスキルス胃癌細胞の増殖促進作用を示した。2)KGFはスキルス胃癌細胞の増殖促進作用を示したが、高分化型胃癌細胞の増殖には影響を与えなかった。胃線維芽細胞から産生されるスキルス胃癌増殖促進因子としてKGFの可能性が示唆された。 2.胃癌細胞へのICAM-1遺伝子導入による転移抑制効果を検討した。2MLNにICAM-1遺伝子を導入し,ICAM-1高発現株2MLN/ICAMを樹立した。末梢血単核球による2MLN/ICAMに対する接着率や細胞障害活性は,2MLNに比し有意に亢進していた(P<0.01)。マウス転移モデルにおいて,2MLN/ICAMのリンパ節転移は減少し,リンパ節転移がICAM-1遺伝子導入により有意に抑制された(P<0.01)。2MLN/ICAMの組織像は,2MLNに比し単核球の浸潤が高頻度に認められた。胃癌細胞へのICAM-1遺伝子の導入は,リンパ節転移に対し抑制効果を認め,転移機序に立脚した新しい治療法として期待された。
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