研究課題/領域番号 |
13470261
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
小林 英司 自治医科大学, 医学部, 教授 (00245044)
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研究分担者 |
袴田 陽二 自治医科大学, 医学部, 講師 (00218380)
金子 隆志 自治医科大学, 医学部, 助手 (10254913)
岡本 宏明 自治医科大学, 医学部, 助教授 (30177092)
田中 紘一 京都大学, 医学部, 教授 (20115877)
村上 孝 自治医科大学, 医学部, 助手 (00326852)
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キーワード | 遺伝子銃 / B型肝炎 / 肝移植 / ラット / DNAワクチン |
研究概要 |
研究初年度となる平成13年は、まず遺伝子銃を用いて筋組織または肝組織によく遺伝子を発現させる方法を検討した。まずラット大腿筋肉に0.5%塩酸ブビバカインを注入し、筋組織の再生を誘導した。そして、遺伝子銃を使用して発光クラゲの蛍光蛋白質であるgreen fluorescent protein(GFP)の遺伝子を導入し、24時間後に蛍光顕微鏡下に遺伝子発現を観察した。ブビバカイン処理を行っていない対象筋線維と比較しておびただしい数のGFP陽性筋線維が観察された。驚くことに、このGFP遺伝子の発現は肉眼的にしだいに減少するものの、数ヶ月間も持続していた。一方、遺伝子筋注法によってGFP遺伝子を導入した場合には、GFP発現は遺伝子銃法と比較して極端に少なかった。さらに最適な遺伝子導入のじきを調べるために、ブビバカイン処理の後、一定の時間において遺伝子銃によってルシフェラーゼ遺伝子を導入し、24時間後のルシフェラーゼ活性を定量化した。その結果、再生筋線維が出現し始める4日目に最も強い遺伝子発現がみられた。またその遺伝子発現もGFP結果と同様に少なくとも一ヶ月以上維持しており、直接ルシフェラーゼ遺伝子を筋肉注射した場合と比べても定量的に有意に高かった。さらにドンリュウラットの前胸部皮下に同系由来の悪性細胞である吉田肉腫細胞(1×105個)を移植し、転移性腫瘍モデルを作成した。肉腫細胞移植後4日目にIL-12cDNAとIL-18cDNA同等比のcDNAを混ぜ金粒子に付着させ、ブビバカイン前処理した大腿筋に遺伝子銃で射入した。このcombination治療の効果はIL-12、IL-18cDNA単独射入群より有意に強い抗腫瘍効果をもたらした。さらにこれらの結果はラットの生存率にも反映された。また、遺伝子銃法と筋注法とで抗腫瘍効果を比較したところ、再生筋組に遺伝子銃でサイトカインを導入した群で優れた腫瘍抑制効果が認められた。これらの抗腫瘍効果はINF-γ濃度の有意な上昇で確認され、遺伝子銃によるIL-12とIL-18のcombmatlon治療で長時間(28日間)にわたり抗腫瘍効果を維持できることが示された。 以上の結果は、再生筋組織における局所免疫療法が全身的な抗腫瘍効果を効率よく、かつ長時間持続的に誘導できることを示唆するものであり、筋組織の一つとなりうることを示している。同様の現象を肝部分切除後の再生肝組織において確認している。今後は筋組織の特異性を生かした長期発現型の非ウイルス性遺伝子治療として、代謝性疾患や悪性腫瘍の治療として、代謝性疾患や悪性腫瘍の治療、さらに臓器移植治療など幅広い分野での応用が期待される。
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