(1)ラット小腸のCrypl細胞から樹立された細胞株IEC-6を用いたin vitroの実験で、消化管粘膜の修復機転の第一相であるrestitutionの早期にはERK1/2のMAPキナーゼが活性化させることが報告されている。今回我々ERK1/2以外のMAPキナーゼであるJNK. p38も活性化されることを見いだした。しかしrestitutionはERKの上流に位置するMAPキナーゼキナーゼ・MEKの阻害剤PD98089にて完全に抑制されることから、ERK1/2依存性であり、JNK、p38のrestitutionにおける意義をそれぞれの活性阻害剤を用いて検討している。またIEC-6の低酸素条件下での培養条件を確立、低酸素条件下ではrestitutionが障害されることが確認されたが、その際のERK1/2、JNK、P38の活性化については現在検討中である。またrestitutionはFGF、EGFなど種々の増殖因子により促進されることが報告されている。我々は消化管内に存在する種々の増殖因子に、低酸素下におけるrestitutionの障害に対する緩和作用を有するものがあるのかを検討中である。 (2)線維芽細胞増殖因子受容体3型IIIbタイプ(FGFR3IIIb)のヒト大腸における発現を臨床切除標本を用いて検討した結果、FGFR3IIIb正常大腸粘膜および大腸癌組織におけるmRNAに発現が確認され、腫瘍組織内において発現が増強している傾向が認められた。
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